第62話 梨華のお手柄
文字数 658文字
阿梨は娘の髪をそっと撫で、眼を伏せた。
「……すまない。わたしがもっと注意していれば、梨華を危険な目に合わせずにすんだのに」
サマルディン軍の出迎えが待つラクシュの港に着いて、安心して──油断してしまっていたのだ。
梨華は意外そうに母を見つめ、横になったまま、小さく首を振った。
「母さまのせいじゃないわ。あたしが自分の意志でやったことだもの。それで、犯人はつかまったの?」
「ああ。刺客が全部白状したよ。タジクとサマルディンの結びつきをよく思わないシャヌーク大臣の仕業だ。ケインたちが失敗したので、急遽、刺客を差し向けたらしい」
これで陰謀はすべて潰 えたのだ。
梨華のお手柄だな、と阿梨は笑む。
「でも梨華、頼むから二度とこんな危ない真似はしないでくれ。梨華が目覚めずにいる間、わたしは生きた心地がしなかった……」
はい、と梨華は素直に返事をする。
「心配かけてごめんなさい」
阿梨はうなずき、再び梨華の髪を優しく撫でる。
「あのね、母さま。あたしね、夢の中で真綾おばあさまに会ったわ」
「母上に?」
「不思議ね。お顔も知らないのに、真綾おばあさまだってわかったわ。みんなが呼んでいるのに、どちらに行っていいかわからなくて、その時に方向を教えてくれたの。母さまと似ていて、とてもきれいな人だった」
「そう、か……」
静かに梨華の話を聞きながら、阿梨は本当に母の真綾が孫娘を守ってくれたのだと思う。
「……すまない。わたしがもっと注意していれば、梨華を危険な目に合わせずにすんだのに」
サマルディン軍の出迎えが待つラクシュの港に着いて、安心して──油断してしまっていたのだ。
梨華は意外そうに母を見つめ、横になったまま、小さく首を振った。
「母さまのせいじゃないわ。あたしが自分の意志でやったことだもの。それで、犯人はつかまったの?」
「ああ。刺客が全部白状したよ。タジクとサマルディンの結びつきをよく思わないシャヌーク大臣の仕業だ。ケインたちが失敗したので、急遽、刺客を差し向けたらしい」
これで陰謀はすべて
梨華のお手柄だな、と阿梨は笑む。
「でも梨華、頼むから二度とこんな危ない真似はしないでくれ。梨華が目覚めずにいる間、わたしは生きた心地がしなかった……」
はい、と梨華は素直に返事をする。
「心配かけてごめんなさい」
阿梨はうなずき、再び梨華の髪を優しく撫でる。
「あのね、母さま。あたしね、夢の中で真綾おばあさまに会ったわ」
「母上に?」
「不思議ね。お顔も知らないのに、真綾おばあさまだってわかったわ。みんなが呼んでいるのに、どちらに行っていいかわからなくて、その時に方向を教えてくれたの。母さまと似ていて、とてもきれいな人だった」
「そう、か……」
静かに梨華の話を聞きながら、阿梨は本当に母の真綾が孫娘を守ってくれたのだと思う。