第3話 海を越えて
文字数 367文字
「で、勇利は?」
笑いを噛み殺しながら阿梨がたずねると、祖父は渋面を作って、
「まだまだ修練が必要じゃな」
名指しされた勇利は口をとがらせる。
「僕が弱いんじゃなくて梨華が強すぎるんだよ。学問なら僕の方が上だ」
「ふーんだ、いざという時には武術の方が役に立つわよ」
兄に舌を出して見せてから、梨華は無邪気に母にまとわりつく。
「ねえ、今度はどこへ航海するの? どんな荷を運ぶの?」
彼らは海の民。船を自在に操り、交易を生業とする一族。そして先代の孫であった阿梨は、女性でありながら水軍の長を務めている。
「何だと思う?」
首をかしげる梨華に、
「海を越えて西の大陸へ送り届けるのは、とびきり素敵なもの……いや、ものではなくて人だな。わたしもこのような依頼は初めてだ」
「……わかんないわ」
降参する梨華に阿梨は微笑みながら、
「花嫁だよ」
と答えた。
笑いを噛み殺しながら阿梨がたずねると、祖父は渋面を作って、
「まだまだ修練が必要じゃな」
名指しされた勇利は口をとがらせる。
「僕が弱いんじゃなくて梨華が強すぎるんだよ。学問なら僕の方が上だ」
「ふーんだ、いざという時には武術の方が役に立つわよ」
兄に舌を出して見せてから、梨華は無邪気に母にまとわりつく。
「ねえ、今度はどこへ航海するの? どんな荷を運ぶの?」
彼らは海の民。船を自在に操り、交易を生業とする一族。そして先代の孫であった阿梨は、女性でありながら水軍の長を務めている。
「何だと思う?」
首をかしげる梨華に、
「海を越えて西の大陸へ送り届けるのは、とびきり素敵なもの……いや、ものではなくて人だな。わたしもこのような依頼は初めてだ」
「……わかんないわ」
降参する梨華に阿梨は微笑みながら、
「花嫁だよ」
と答えた。