第20話 なれそめ
文字数 654文字
「ところで、阿梨さまはいかがでしたの?」
「は?」
唐突に話を振られて阿梨は眼をまるくした。
「勇駿さまとのなれそめをお聞きしとうございますわ」
「なれそめと言われましても……わたしが生まれた時から勇駿はそばにおりました。遊び相手兼護衛として、一緒に育ちました」
「お二人は幼馴染だったのですね」
声を弾ませ、アディーナ姫は胸の前で両手を組み合わせる。
「あの……ご結婚される時にお父上……国王陛下は反対されませんでしたの?」
何も、と阿梨はかぶりを振った。
父である宣統王 は穏やかな人物で、娘を手駒にしてどこぞの王家に嫁がせようなどという野心は全くなかったといっていい。
そもそも父が愛した母の真綾もまた海龍一族──海の民の娘だったのだから。
それに、と阿梨は肩をすくめてみせる。
「わたしは以前、強引に迫ってきたとある国の王子を投げ飛ばしたことがありまして、噂はあっという間に広がり、縁組の申し込みなどひとつも来ませんでした」
武勇伝を持つ型破り王女に、各国の王子たちも恐れをなしたらしい。
「むしろ一番反対したのは夫の父でした」
当時の苦労を思い返し、阿梨は深いため息をついた。
「まあ、なぜ?」
「夫の父は忠義者というか頑固者というか、『身分が違う!』の一点張りで……」
確かに父は羅紗の国王ではあるけれど、同じ海の民の一族なのだから、違いなどありはしないというのに。
「は?」
唐突に話を振られて阿梨は眼をまるくした。
「勇駿さまとのなれそめをお聞きしとうございますわ」
「なれそめと言われましても……わたしが生まれた時から勇駿はそばにおりました。遊び相手兼護衛として、一緒に育ちました」
「お二人は幼馴染だったのですね」
声を弾ませ、アディーナ姫は胸の前で両手を組み合わせる。
「あの……ご結婚される時にお父上……国王陛下は反対されませんでしたの?」
何も、と阿梨はかぶりを振った。
父である
そもそも父が愛した母の真綾もまた海龍一族──海の民の娘だったのだから。
それに、と阿梨は肩をすくめてみせる。
「わたしは以前、強引に迫ってきたとある国の王子を投げ飛ばしたことがありまして、噂はあっという間に広がり、縁組の申し込みなどひとつも来ませんでした」
武勇伝を持つ型破り王女に、各国の王子たちも恐れをなしたらしい。
「むしろ一番反対したのは夫の父でした」
当時の苦労を思い返し、阿梨は深いため息をついた。
「まあ、なぜ?」
「夫の父は忠義者というか頑固者というか、『身分が違う!』の一点張りで……」
確かに父は羅紗の国王ではあるけれど、同じ海の民の一族なのだから、違いなどありはしないというのに。