第9話 婚礼の阻止
文字数 851文字
ラルフはまだケインの意図が呑み込めず、年上の相棒を凝視している。
「ここからサマルディンのある西の大陸コーラリアまでは遠い。水軍は必ず途中で補給に港に立ち寄るはずだ」
テーブルに海図を広げ、ケインがにやりと笑う。
「一国の姫とお付きの者たちと山のような婚礼道具を運ぶ大船団だ。それだけの補給をまかなえる大きな港といえばただひとつ……フローレスだ。そしてそこならタジクの護衛の兵は同行してきたわずかな連中だけだ。水軍の奴らもいるがな」
海図に示された場所をとん、と指で叩く。そこは交易の中継地点として栄える海上都市だ。
「フローレスでお姫さんをさらうのか?」
「そんな不粋な真似は必要ねえよ」
眉根を寄せて琥珀色の酒をぐいっとあおる。
「雇い主の命令は、婚礼の阻止だ。いかなる手段を用いてもとは言われたが。姫をさらえとも殺せとも言われてない。おまえもよく知っているように俺は殺しは嫌いでね」
「だけど、姫をさらいもせず、婚礼をできなくするって、どうやって……」
「方法ならいくらでもある。俺はこの婚礼に関する報告書を隅から隅まで読んだ。中に面白い記述があったぜ。耳を貸せ」
ケインはテーブルから身を乗り出し、彼の考えた方法をラルフに耳打ちする。
「なるほど、やってみる価値はあるな」
少々回りくどいが、そのやり方ならケインの嫌う不粋な真似をせずとも、婚礼を阻止できそうだ。
感心するラルフに、
「とにかく俺たちはフローレスに向かう。先回りして腕の立つ仲間を集めておかなきゃならん」
方針を固めるとケインは酒場の席から立ち上がった。
「今夜は宿に帰って、明日はフローレス行きの船を探すぞ」
後を追うように立ち上がり、歩き出すラルフを振り返り、ケインは唇の端に笑みを浮かべた。
「そういえば羅紗の水軍はおそろしく腕の立つ女長 が率いていると聞いた。どんな人物か、会ってみたいものだな」
「ここからサマルディンのある西の大陸コーラリアまでは遠い。水軍は必ず途中で補給に港に立ち寄るはずだ」
テーブルに海図を広げ、ケインがにやりと笑う。
「一国の姫とお付きの者たちと山のような婚礼道具を運ぶ大船団だ。それだけの補給をまかなえる大きな港といえばただひとつ……フローレスだ。そしてそこならタジクの護衛の兵は同行してきたわずかな連中だけだ。水軍の奴らもいるがな」
海図に示された場所をとん、と指で叩く。そこは交易の中継地点として栄える海上都市だ。
「フローレスでお姫さんをさらうのか?」
「そんな不粋な真似は必要ねえよ」
眉根を寄せて琥珀色の酒をぐいっとあおる。
「雇い主の命令は、婚礼の阻止だ。いかなる手段を用いてもとは言われたが。姫をさらえとも殺せとも言われてない。おまえもよく知っているように俺は殺しは嫌いでね」
「だけど、姫をさらいもせず、婚礼をできなくするって、どうやって……」
「方法ならいくらでもある。俺はこの婚礼に関する報告書を隅から隅まで読んだ。中に面白い記述があったぜ。耳を貸せ」
ケインはテーブルから身を乗り出し、彼の考えた方法をラルフに耳打ちする。
「なるほど、やってみる価値はあるな」
少々回りくどいが、そのやり方ならケインの嫌う不粋な真似をせずとも、婚礼を阻止できそうだ。
感心するラルフに、
「とにかく俺たちはフローレスに向かう。先回りして腕の立つ仲間を集めておかなきゃならん」
方針を固めるとケインは酒場の席から立ち上がった。
「今夜は宿に帰って、明日はフローレス行きの船を探すぞ」
後を追うように立ち上がり、歩き出すラルフを振り返り、ケインは唇の端に笑みを浮かべた。
「そういえば羅紗の水軍はおそろしく腕の立つ