第33話 小屋の中へ
文字数 630文字
「すごーい、どうしてわかるの? おばあちゃん」
「わかるさ。この水晶にすべて映し出されているよ」
首をかしげながら透明な玉を見つめていた梨華は、
「じゃあ、未来もわかる?」
「ああ、わかるとも」
「あたし、母さまの跡を継いで、いずれは立派な水軍の長になりたいの。なれるかしら」
両手を胸の前で組み合わせ、真摯な瞳で問いかける。
「そうだねぇ、未来を視るにはもっとくわしく話を聞かなくちゃいけないね。中へお入り」
カーテンで仕切られた小屋の入り口を指し示す。
「あ、でも、あたしたち、お金持ってないわ」
「なあに、気にしなくていいさ。特別だよ」
「ありがとう!」
声を弾ませる梨華の袖を勇利が引く。
「梨華……よそうよ」
老婆とはいえ見知らぬ相手だ。勇利が警戒するのも当然である。
しかし兄の忠告は、がぜん興味をそそられた梨華の耳を素通りするだけだ、
「平気だってば。怖かったら兄さまはここに残ってなさい。あたしだけでも行くわ」
「またそんなこと言って~」
勇利は躊躇 していたが、梨華をひとりで行かせるわけにもいかず、仕方なく後をついて行く。
二人はカーテンを手でどけて中に入った。内部は薄暗く、眼が慣れないうちは様子がよくわからない。ただ甘いお香のような匂いがする。
老婆もまた二人の後についてゆっくりとした足取りで中に入ってくる。
「わかるさ。この水晶にすべて映し出されているよ」
首をかしげながら透明な玉を見つめていた梨華は、
「じゃあ、未来もわかる?」
「ああ、わかるとも」
「あたし、母さまの跡を継いで、いずれは立派な水軍の長になりたいの。なれるかしら」
両手を胸の前で組み合わせ、真摯な瞳で問いかける。
「そうだねぇ、未来を視るにはもっとくわしく話を聞かなくちゃいけないね。中へお入り」
カーテンで仕切られた小屋の入り口を指し示す。
「あ、でも、あたしたち、お金持ってないわ」
「なあに、気にしなくていいさ。特別だよ」
「ありがとう!」
声を弾ませる梨華の袖を勇利が引く。
「梨華……よそうよ」
老婆とはいえ見知らぬ相手だ。勇利が警戒するのも当然である。
しかし兄の忠告は、がぜん興味をそそられた梨華の耳を素通りするだけだ、
「平気だってば。怖かったら兄さまはここに残ってなさい。あたしだけでも行くわ」
「またそんなこと言って~」
勇利は
二人はカーテンを手でどけて中に入った。内部は薄暗く、眼が慣れないうちは様子がよくわからない。ただ甘いお香のような匂いがする。
老婆もまた二人の後についてゆっくりとした足取りで中に入ってくる。