第72話 梨華の朝食
文字数 549文字
パンにチーズ、果物とお茶。梨華の朝食を載せた盆を片手に、勇利は部屋のドアをこんこんと叩いた。
中から、はーい、という妹の元気な返事を聞くとドアを開け、できるだけ明るく声をかける。
「おはよう、梨華」
「兄さま?」
案の定、梨華は眼をぱちぱちさせている。
「朝ごはん、持ってきたよ」
「母さまは?」
当然の質問に勇利は平静を装って、
「えーと、母さまはね、今日は忙しくて朝から出かけているんだ。だから僕が代わりに朝ごはん運んできた」
慣れない嘘に胸をどきどきさせながら、盆を寝台のかたわらのテーブルに置く。
「傷はどう?」
「もうほとんど痛くないわ」
「ならよかった。遅くなってごめんね。何から食べる?」
「じゃあ、まずはお茶から」
朝のお茶は母の好きな茉莉花 茶だ。
寝台から上半身を起こした梨華の背にクッションを当て、白い大きなナプキンを広げる。盆からカップを持ち上げ、慎重に手渡す。
「熱いから気をつけてね」
梨華はそれを受け取り、こくりと飲むと、次はパンの載ったお皿を取ってもらう。
勇利は手際よく妹の食事の手助けをしていったが、やはり母のことが気になって仕方ない。
中から、はーい、という妹の元気な返事を聞くとドアを開け、できるだけ明るく声をかける。
「おはよう、梨華」
「兄さま?」
案の定、梨華は眼をぱちぱちさせている。
「朝ごはん、持ってきたよ」
「母さまは?」
当然の質問に勇利は平静を装って、
「えーと、母さまはね、今日は忙しくて朝から出かけているんだ。だから僕が代わりに朝ごはん運んできた」
慣れない嘘に胸をどきどきさせながら、盆を寝台のかたわらのテーブルに置く。
「傷はどう?」
「もうほとんど痛くないわ」
「ならよかった。遅くなってごめんね。何から食べる?」
「じゃあ、まずはお茶から」
朝のお茶は母の好きな
寝台から上半身を起こした梨華の背にクッションを当て、白い大きなナプキンを広げる。盆からカップを持ち上げ、慎重に手渡す。
「熱いから気をつけてね」
梨華はそれを受け取り、こくりと飲むと、次はパンの載ったお皿を取ってもらう。
勇利は手際よく妹の食事の手助けをしていったが、やはり母のことが気になって仕方ない。