第28話 自分たちだけで
文字数 561文字
結局、梨華の抗議も空しく、兄妹は留守番を言いつけられた。信用されていないらしく、部屋には外側から鍵までかけられている。
母たちが下船する姿を窓から眺め、
「つーまんないの」
と梨華は寝台にひっくり返った。
しばらくは寝そべったまま、眼を閉じていたが、急にがばっと跳ね起きると、
「ね、兄さま」
何かを考えついた顔つきで、兄の顔をのぞきこむ。
妹のわくわくした表情に勇利はとてつもなく嫌な予感がした。
「赤ん坊じゃあるまい、付き添いなんていらないわ。あたしたちだけで街に行ってみましょうよ」
「でも母さまに船に残っているように言われたよ」
「大丈夫よ。ちょっとだけ船を降りて、母さまたちが帰ってくる前に戻ってくればいいのよ」
「だけど……」
ためらう勇利に梨華はつん、とそっぽを向いて、
「じゃいいわ。あたしひとりだけで行くから」
さっそく船窓からの脱出用にシーツを寝台から外していく。
フローレスなら前に一度行ったことがある。運河に沿って石造りのお屋敷が並び、どきどきするほど綺麗な街だった。
「待ってよ、梨華! ひとりでなんて危ないよ」
梨華はくるりと振り返り、にんまり笑った。
「じゃ、一緒に行くわね?」
母たちが下船する姿を窓から眺め、
「つーまんないの」
と梨華は寝台にひっくり返った。
しばらくは寝そべったまま、眼を閉じていたが、急にがばっと跳ね起きると、
「ね、兄さま」
何かを考えついた顔つきで、兄の顔をのぞきこむ。
妹のわくわくした表情に勇利はとてつもなく嫌な予感がした。
「赤ん坊じゃあるまい、付き添いなんていらないわ。あたしたちだけで街に行ってみましょうよ」
「でも母さまに船に残っているように言われたよ」
「大丈夫よ。ちょっとだけ船を降りて、母さまたちが帰ってくる前に戻ってくればいいのよ」
「だけど……」
ためらう勇利に梨華はつん、とそっぽを向いて、
「じゃいいわ。あたしひとりだけで行くから」
さっそく船窓からの脱出用にシーツを寝台から外していく。
フローレスなら前に一度行ったことがある。運河に沿って石造りのお屋敷が並び、どきどきするほど綺麗な街だった。
「待ってよ、梨華! ひとりでなんて危ないよ」
梨華はくるりと振り返り、にんまり笑った。
「じゃ、一緒に行くわね?」