第14話 海の女神に
文字数 617文字
航海は順調に始まった。
蒼穹 の下、船は追い風を受け、すべるように海原を進んで行く。
やがて陸地がすっかり見えなくなると、阿梨は甲板にたたずむアディーナ姫に声をかけた。
「姫君、ご気分はいかがでございますか。めまいや吐き気などはお感じになられませぬか?」
アディーナ姫は振り返り、
「いいえ、少しも。むしろ心地よいくらいですわ」
「それは頼もしい」
その言葉の意味がわからず、小首をかしげるアディーナ姫に、阿梨は甲板を目線で示した。
そちらに視線を向けると、甲板では自分に付き添ってくれているタジクの護衛の兵や、侍女たちが青ざめた顔をしてぐったりしている。
「皆、どうしたの?」
不思議そうにたずねる姫に、阿梨は、船酔いです、と説明した。
「タジクの方々はおそらく船に乗るのは初めてかと存じます。海の上は揺れますゆえ、慣れぬと気分が悪くなってしまうのです」
皆の痛々しい姿に、アディーナ姫は思わず口もとに両手を当てる。
「初めて船にお乗りになって何ともないとは、姫は海の女神に気に入られたのやもしれませぬな」
ふふっと小さく笑う阿梨にアディーナ姫は、
「阿梨さまはいかがでしたの? 最初に船に乗られた時は」
「わたしは海の上、水軍の船の中で生まれました。生まれながらに海に抱 かれていたようなものです」
やがて陸地がすっかり見えなくなると、阿梨は甲板にたたずむアディーナ姫に声をかけた。
「姫君、ご気分はいかがでございますか。めまいや吐き気などはお感じになられませぬか?」
アディーナ姫は振り返り、
「いいえ、少しも。むしろ心地よいくらいですわ」
「それは頼もしい」
その言葉の意味がわからず、小首をかしげるアディーナ姫に、阿梨は甲板を目線で示した。
そちらに視線を向けると、甲板では自分に付き添ってくれているタジクの護衛の兵や、侍女たちが青ざめた顔をしてぐったりしている。
「皆、どうしたの?」
不思議そうにたずねる姫に、阿梨は、船酔いです、と説明した。
「タジクの方々はおそらく船に乗るのは初めてかと存じます。海の上は揺れますゆえ、慣れぬと気分が悪くなってしまうのです」
皆の痛々しい姿に、アディーナ姫は思わず口もとに両手を当てる。
「初めて船にお乗りになって何ともないとは、姫は海の女神に気に入られたのやもしれませぬな」
ふふっと小さく笑う阿梨にアディーナ姫は、
「阿梨さまはいかがでしたの? 最初に船に乗られた時は」
「わたしは海の上、水軍の船の中で生まれました。生まれながらに海に