第29話 計画変更
文字数 596文字
幸い、見張りは手薄だった。母の言うように今日は皆、忙しいのだろう。
外したシーツとカーテンをつないで寝台の足に結び、窓から垂らして脱出するくらい、船で生まれ育った兄妹には朝メシ前だ。
が、その姿を見つめる者がいることに二人は気づかなかった。
「ありゃあいったい何だ?」
水夫を装って旗艦に近づいたケインとラルフは、そこで船から脱走しようとしている子供たちを発見したのである。
ケインは呆気にとられて二人を眺めていたが、やがて雇い主からの詳細な報告書を思い出した。
確か水軍の長は八歳になる双子の母親だという。
年頃といい、贅沢ではないがきちんとした身なりといい、旗艦から出てきたのは長の子供たちに違いない。
おおかた留守番が不満で船を抜け出した、というところだろう。
これは絶好の機会かもしれない、とケインは思った。
本来ならば自分たちは船に忍び込んで「ある物」を探そうとしていたのだが、大半が出払ったとはいえ、見張りが残っているはずだ。
見張りに気づかれないよう首尾よく目当ての品を手に入れられる可能性は、決して高くはない。
ならばあの子供たちを利用してみる方が得策ではないか。
「ここは計画変更してみるか」
ラルフの方を向いたケインは親指を立て、片目をつむってみせた。
外したシーツとカーテンをつないで寝台の足に結び、窓から垂らして脱出するくらい、船で生まれ育った兄妹には朝メシ前だ。
が、その姿を見つめる者がいることに二人は気づかなかった。
「ありゃあいったい何だ?」
水夫を装って旗艦に近づいたケインとラルフは、そこで船から脱走しようとしている子供たちを発見したのである。
ケインは呆気にとられて二人を眺めていたが、やがて雇い主からの詳細な報告書を思い出した。
確か水軍の長は八歳になる双子の母親だという。
年頃といい、贅沢ではないがきちんとした身なりといい、旗艦から出てきたのは長の子供たちに違いない。
おおかた留守番が不満で船を抜け出した、というところだろう。
これは絶好の機会かもしれない、とケインは思った。
本来ならば自分たちは船に忍び込んで「ある物」を探そうとしていたのだが、大半が出払ったとはいえ、見張りが残っているはずだ。
見張りに気づかれないよう首尾よく目当ての品を手に入れられる可能性は、決して高くはない。
ならばあの子供たちを利用してみる方が得策ではないか。
「ここは計画変更してみるか」
ラルフの方を向いたケインは親指を立て、片目をつむってみせた。