第43話 どうにかして
文字数 568文字
「人質なら僕がなる。僕は水軍の長の嫡男だ。水軍は僕が継ぐ。梨華には人質の価値なんてないよ」
「ちょっと、何言って……」
「梨華は黙ってて!」
いつもはもの静かな兄に気圧され、梨華は口をつぐむ。
「人質なら僕だけで充分だ。だから梨華は放してやってよ」
勇利は必死に言いつのる。せめて妹だけも自由にしてやりたくて。
が、銀髪の男は勇利の考えを見抜いたように、
「麗しい兄妹愛だがそいつはできないな。おまえさんたちは長の双子だ。二人そろっていた方が値打ちがあるってもんだ」
あっさり却下すると、ドアが閉められ、がちゃりと鍵がかけられる。
しばらくの沈黙の後、梨華は絞り出すような声で、
「……悔しい」
「梨華……」
「悔しい──悔しい! さらわれた挙句に人質にされるなんて! 母さまの足手まといになるなんて!」
言葉と一緒に涙がぽたぽたと床に落ちていく。その涙をぬぐってやりたくても両手を縛られている勇利にはどうすることもできない。
勇利は梨華をのぞきこんで、
「泣かないで、梨華。起きてしまったことは仕方ない。それより手だてを考えようよ」
手だて? とうつむいていた梨華は顔を上げる。
「そう。どうにかしてここから逃げるんだ」
「ちょっと、何言って……」
「梨華は黙ってて!」
いつもはもの静かな兄に気圧され、梨華は口をつぐむ。
「人質なら僕だけで充分だ。だから梨華は放してやってよ」
勇利は必死に言いつのる。せめて妹だけも自由にしてやりたくて。
が、銀髪の男は勇利の考えを見抜いたように、
「麗しい兄妹愛だがそいつはできないな。おまえさんたちは長の双子だ。二人そろっていた方が値打ちがあるってもんだ」
あっさり却下すると、ドアが閉められ、がちゃりと鍵がかけられる。
しばらくの沈黙の後、梨華は絞り出すような声で、
「……悔しい」
「梨華……」
「悔しい──悔しい! さらわれた挙句に人質にされるなんて! 母さまの足手まといになるなんて!」
言葉と一緒に涙がぽたぽたと床に落ちていく。その涙をぬぐってやりたくても両手を縛られている勇利にはどうすることもできない。
勇利は梨華をのぞきこんで、
「泣かないで、梨華。起きてしまったことは仕方ない。それより手だてを考えようよ」
手だて? とうつむいていた梨華は顔を上げる。
「そう。どうにかしてここから逃げるんだ」