第35話 輝く星
文字数 581文字
まさか、お茶の中に何か……。
何が起きたか、まともに考えることさえできずに、勇利と梨華は折り重なるように床に倒れこむ。
それを待っていたかのように小屋の反対側の入り口から二人の男が姿を現した。ケインとラルフだ。
「ご苦労だったな、ばあさん」
梨華の体を軽々と片腕に抱いた男──ケインが老婆に金貨を握らせる。相棒のラルフが同じように勇利を抱える。
「あんた、その子たちをどうする気だい?」
老婆は鋭い声で問いかけた。報酬につられて手を貸したものの、まだ幼い子供たちがこれからどうなるのか、不安になったのである。
「心配するなって」
ケインは
「俺は殺しなんて不粋な真似は嫌いだし、子供をさらって売り飛ばすなんてあくどい真似も大嫌いだ。なあに、この子らにはちょいと人質役をやってもらうだけさ」
「あんたが何を企んでいるかは知らないが、くれぐれもその子たちに手を出すんじゃないよ」
強い口調で老婆は念を押した。子供たちに語ったことは嘘ではない。二人は真実、輝く星の下に生まれた双子なのだ。
おう、とケインは片腕に梨華を抱えたまま、もう一方の手を上げてみせた。