第41話 梨華の怒り
文字数 602文字
両手を縛られたまま、梨華は毅然と立ち上がった。
「あんた誰 !? あたしたちをどうするつもり!?」
男は含み笑いしながら、
「こりゃ気が強えや。さすが水軍の長の娘だ」
「あたしたちを帰してよ! 今頃、母さまや船のみんながきっと心配してるわ」
黙って抜け出して、少しばかり街歩きを楽しんだら、気づかれないうちに戻るつもりだったのに。
「俺の名はケイン。稼業は荒事屋ってところだな。なあに、そのうちに母さんが迎えに来るさ。ある品物を持ってな」
「品物?」
眼をしばたたかせて訊き返す梨華に、
「アディーナ姫の持つ、サマルディン王家の婚礼にはなくてはならないエメラルドの指輪さ」
「何ですって !?」
その指輪なら梨華もアディーナ姫に見せてもらったことがある。姫の瞳の色と同じ、澄んだ美しい緑だった。
「だめよ! 指輪がなかったら姫さまはロジェ王子と結婚式ができないわ」
男は飄々として、その通り、と答える。
「そこが狙いなのさ。誰も殺さないし、誰も傷つけない。だが婚礼は阻止できる。この縁組を破談にするのが俺たちの雇い主のご希望でね」
男の言い草を聞いているうちに、梨華は猛然と腹が立ってきた。
自分たちをさらってアディーナ姫の大切な指輪と交換する?
何をフザけたことを言っているのだ、この男は!
「あんた誰 !? あたしたちをどうするつもり!?」
男は含み笑いしながら、
「こりゃ気が強えや。さすが水軍の長の娘だ」
「あたしたちを帰してよ! 今頃、母さまや船のみんながきっと心配してるわ」
黙って抜け出して、少しばかり街歩きを楽しんだら、気づかれないうちに戻るつもりだったのに。
「俺の名はケイン。稼業は荒事屋ってところだな。なあに、そのうちに母さんが迎えに来るさ。ある品物を持ってな」
「品物?」
眼をしばたたかせて訊き返す梨華に、
「アディーナ姫の持つ、サマルディン王家の婚礼にはなくてはならないエメラルドの指輪さ」
「何ですって !?」
その指輪なら梨華もアディーナ姫に見せてもらったことがある。姫の瞳の色と同じ、澄んだ美しい緑だった。
「だめよ! 指輪がなかったら姫さまはロジェ王子と結婚式ができないわ」
男は飄々として、その通り、と答える。
「そこが狙いなのさ。誰も殺さないし、誰も傷つけない。だが婚礼は阻止できる。この縁組を破談にするのが俺たちの雇い主のご希望でね」
男の言い草を聞いているうちに、梨華は猛然と腹が立ってきた。
自分たちをさらってアディーナ姫の大切な指輪と交換する?
何をフザけたことを言っているのだ、この男は!