第65話 海の民の娘
文字数 504文字
考えてもみなかった母の言葉に梨華は唖然として、
「嫌よ!」
ときっぱり否定してのけた。
「宮廷なんて窮屈なところ、大っ嫌い! お願いだから、あたしをそんな所に押しこめないで」
「梨華……」
「それとも母さまは梨華が邪魔? 足手まといに思ってる?」
不安をにじませてたずねる梨華に、まさか、と阿梨は大きくかぶりを振る。
「邪魔であるはずがないだろう! 誰が好きこのんで可愛い娘を手放すものか。わたしはできることなら毎日を梨華と勇利と共に過ごしたい」
「じゃあ決まりね。あたしは今まで通り、母さまや父さま、兄さまやおじいさま、船のみんなと一緒にここで暮らす」
「しかし……」
逡巡する阿梨をさえぎるように、
「大丈夫よ、こんなケガ、すぐによくなるわ。あたしは今の暮らしが好き。風を追い、海を往く水軍の生活が好き」
寝台に横になりながらも、瞳を輝かせて問いかける。
「ねえ、次はどこへ行くの? 海を渡ってどんな荷を運ぶの?」
そして少女は誇らしげに微笑んだ。
「だって、あたしは母さまの……海の民の娘だもの」
「嫌よ!」
ときっぱり否定してのけた。
「宮廷なんて窮屈なところ、大っ嫌い! お願いだから、あたしをそんな所に押しこめないで」
「梨華……」
「それとも母さまは梨華が邪魔? 足手まといに思ってる?」
不安をにじませてたずねる梨華に、まさか、と阿梨は大きくかぶりを振る。
「邪魔であるはずがないだろう! 誰が好きこのんで可愛い娘を手放すものか。わたしはできることなら毎日を梨華と勇利と共に過ごしたい」
「じゃあ決まりね。あたしは今まで通り、母さまや父さま、兄さまやおじいさま、船のみんなと一緒にここで暮らす」
「しかし……」
逡巡する阿梨をさえぎるように、
「大丈夫よ、こんなケガ、すぐによくなるわ。あたしは今の暮らしが好き。風を追い、海を往く水軍の生活が好き」
寝台に横になりながらも、瞳を輝かせて問いかける。
「ねえ、次はどこへ行くの? 海を渡ってどんな荷を運ぶの?」
そして少女は誇らしげに微笑んだ。
「だって、あたしは母さまの……海の民の娘だもの」