第49話 自由の身となって
文字数 668文字
姫の嫁ぎ先のサマルディンの風習では、婚姻の証に指輪を左手の薬指にはめるという。
だから阿梨はそれを右手の薬指にはめた。左手の薬指にはめていいのは正当な持ち主であるアディーナ姫だけだ。
なるほど、とケインはにやりと笑った。
「どうやら水軍の長は律義らしい。では、そいつを渡してもらおうか」
「子供たちが先だ!」
「なら同時だ。武器を置いてこっちに歩いてきな」
言われた通り、阿梨は腰に差していた剣を地面に置き、歩を進める。
ケインは相棒のラルフに向かって、
「おい、子供たちを放してやりな」
「だが……」
逡巡するラルフに、
「この女は誇り高い。卑怯な真似はしないさ」
「悪党に褒められても嬉しくはないな」
相棒の指示に、渋々ラルフは子供たちの腰に結んでいた縄をほどいてやる。ある意味、ケインと彼女は似た者同士ではないかと思いながら。
子供たちは後ろ手に縛られたまま、それでも自由の身となって母のもとに一目散に駆けてゆく。
「母さまあ!」
阿梨は片膝をついてしゃがみこみ、胸に飛びこんでくる子供たちをぎゅっと抱きしめた。
「大事ないか !? ケガなどしていないな?」
涙があふれて言葉にならず、うなずく子供たちをさらにきつく抱きしめる。
叱られるだろうと思った。言いつけを破って勝手に街へ出たあげく、さらわれてこんな騒ぎを起こしたのだ。うんと叱られるだろうと思った。
しかし母は何も言わず、自分たちを抱きしめたままだ。
だから阿梨はそれを右手の薬指にはめた。左手の薬指にはめていいのは正当な持ち主であるアディーナ姫だけだ。
なるほど、とケインはにやりと笑った。
「どうやら水軍の長は律義らしい。では、そいつを渡してもらおうか」
「子供たちが先だ!」
「なら同時だ。武器を置いてこっちに歩いてきな」
言われた通り、阿梨は腰に差していた剣を地面に置き、歩を進める。
ケインは相棒のラルフに向かって、
「おい、子供たちを放してやりな」
「だが……」
逡巡するラルフに、
「この女は誇り高い。卑怯な真似はしないさ」
「悪党に褒められても嬉しくはないな」
相棒の指示に、渋々ラルフは子供たちの腰に結んでいた縄をほどいてやる。ある意味、ケインと彼女は似た者同士ではないかと思いながら。
子供たちは後ろ手に縛られたまま、それでも自由の身となって母のもとに一目散に駆けてゆく。
「母さまあ!」
阿梨は片膝をついてしゃがみこみ、胸に飛びこんでくる子供たちをぎゅっと抱きしめた。
「大事ないか !? ケガなどしていないな?」
涙があふれて言葉にならず、うなずく子供たちをさらにきつく抱きしめる。
叱られるだろうと思った。言いつけを破って勝手に街へ出たあげく、さらわれてこんな騒ぎを起こしたのだ。うんと叱られるだろうと思った。
しかし母は何も言わず、自分たちを抱きしめたままだ。