第10話 姫君の到着

文字数 476文字

 タジク国第一王女・アディーナ姫の一行は予定通り、泉翔の港に到着した。
 大勢の護衛の兵に付き添われ、国の威信をかけた豪華な婚礼道具も一緒である。
 姫は今夜は街で一番の豪商の家に泊まり、明日、水軍の船でサマルディン王国へと出発する。
 山ほどの婚礼道具はすべて、今日中に船に積み込んでおかなくてはならない。
 そちらの手配は勇駿にまかせ、阿梨は姫の滞在する館へと向かった。
 今回の依頼、サマルディン王国のある西の大陸まで送り届ける「花嫁」に挨拶するためである。
 館で通されたのはシャンデリアと絹のタペストリーで飾られた豪奢な応接間。
 侍女たちにかしずかれて、部屋の中央にアディーナ姫はいた。
 裾の長い白いドレスの上に花模様の刺繍をほどこされた短めの上着──タジクの民族衣装を身にまとい、ゆったりと長椅子に座っている。
 年齢は十七歳。透けるように白い肌、結わずに背に流した輝く金の髪、緑の瞳。可憐でありながら華やかな、まさしく花のような美姫である。




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登場人物紹介

阿梨(あり)


羅紗国の王女にして水軍の美しき長。結婚して母となっても、変わらず颯爽と水軍を率いている。

勇駿(ゆうしゅん)


公私共に阿梨を支える夫。阿梨と子供たちをこよなく愛している。

梨華(りか)


双子の妹。母譲りの容姿と武術の才能を持つ。勝気な性格でいつも兄を振り回している。

勇利(ゆうり)


双子の兄。学問には秀でているが、ちょっと気弱。常に妹に押され気味。

勇仁(ゆうじん)


勇駿の父。以前は長の補佐として采配をふるっていたが、今は孫たちの教育がもっぱらの生きがい。

アディーナ姫


タジク国第一王女。二つの国の絆を深めるために海を渡る花嫁。金髪と緑の瞳の、美しく優しい姫君。

寄港地のフローレスでひと時の自由を願う。

ケイン


荒事屋。名の通り、目的のためなら荒っぽい手段も辞さない裏社会の人間だが、殺しはやらないのが信条。

ラルフ


ケインの相棒。孤児だった自分に手を差し伸べてくれたケインに恩義を感じ、行動を共にしている。

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