第51話 剣戟(けんげき)
文字数 629文字
阿梨は絶え間なく攻撃を繰り出しながら、
「わたしは殺しは嫌いだ」
「気が合うな。俺も同じだ」
「だが、おまえは別だ。年端もゆかぬ子供をさらって人質にするような卑劣漢など、切り刻んで鮫のエサにしてくれるわ!」
どうやら自分は母親という人種を本気で怒らせてしまったらしい。敵に回したら実に厄介な相手だ。
ふと気づけば周囲ではラルフや雇った部下たちも、水軍の者と切りあいになっている。まあ、予想はしていた展開だが。
しかしケインとて荒事で生きてきた男だ。
いくら阿梨の剣戟が早くても、間合いさえ取れば、長剣を持ったケインの方が有利だった。
最初は圧倒されていたケインも阿梨の動きに慣れてくると、徐々に反撃の糸口がつかめてくる。
やがて阿梨の攻撃をかわした直後、突き出されたケインの剣が彼女の右腕をかすめた。
「くっ……!」
鋭い痛みに顔をしかめる阿梨を、さらにケインの斬撃が襲う。
阿梨はとっさに左手に持っていた短剣で刃を受け止めたが、はずみで傷を負った右手から剣が落ちる。
ケインは決定的となる一撃を与えるべく、冷酷に長剣を振りかざす。
「悪いが、その右腕、いただいた!」
が、次の瞬間、ケインは顔面に全く予期せぬ衝撃を感じた。
いったい何が起こったのか。状況を理解しようと阿梨の背後を見ると、そこにはこちらを睨みつけながら梨華が立っていた。
「わたしは殺しは嫌いだ」
「気が合うな。俺も同じだ」
「だが、おまえは別だ。年端もゆかぬ子供をさらって人質にするような卑劣漢など、切り刻んで鮫のエサにしてくれるわ!」
どうやら自分は母親という人種を本気で怒らせてしまったらしい。敵に回したら実に厄介な相手だ。
ふと気づけば周囲ではラルフや雇った部下たちも、水軍の者と切りあいになっている。まあ、予想はしていた展開だが。
しかしケインとて荒事で生きてきた男だ。
いくら阿梨の剣戟が早くても、間合いさえ取れば、長剣を持ったケインの方が有利だった。
最初は圧倒されていたケインも阿梨の動きに慣れてくると、徐々に反撃の糸口がつかめてくる。
やがて阿梨の攻撃をかわした直後、突き出されたケインの剣が彼女の右腕をかすめた。
「くっ……!」
鋭い痛みに顔をしかめる阿梨を、さらにケインの斬撃が襲う。
阿梨はとっさに左手に持っていた短剣で刃を受け止めたが、はずみで傷を負った右手から剣が落ちる。
ケインは決定的となる一撃を与えるべく、冷酷に長剣を振りかざす。
「悪いが、その右腕、いただいた!」
が、次の瞬間、ケインは顔面に全く予期せぬ衝撃を感じた。
いったい何が起こったのか。状況を理解しようと阿梨の背後を見ると、そこにはこちらを睨みつけながら梨華が立っていた。