第56話 水軍を継ぐ者
文字数 514文字
「もう二度と言いつけを破って馬鹿な真似はしないように。よいか?」
「はい」
涙声で、それでも返事だけはする。
「そなたたちは海龍一族の長の嫡子であり、いずれは水軍を継ぐ者なのだから、軽はずみな行動はつつしむように」
泣きながらも梨華は眼を見開いて母を見た。水軍を継ぐ者──今、母は確かにそう言った。
次の瞬間、ぎゅっと抱きしめられる感触。
「わかればいい。……無事でよかった」
梨華にも勇利にも伝わってくる。誰よりも自分たちを案じたのは母だと。
「あの時、加勢をしてくれて、剣を持ってきてくれてありがとう。二人の助力がなかったら、わたしは危なかった」
ケインという男は強かった。もし二人が来てくれなかったら、本当に右腕を失っていたかもしれない。
子供たちを抱きしめながら阿梨はふうっと息を吐いた。
壮麗なる海の都の、何と長い一日であったことか。
「二人とも疲れただろう。お腹は空いてないか? 何か軽く食べて、今夜は早く寝なさい」
こくんとうなずく子供たちに母は優しく語りかけた。
「罰の甲板掃除は明日からでよいからね」
「はい」
涙声で、それでも返事だけはする。
「そなたたちは海龍一族の長の嫡子であり、いずれは水軍を継ぐ者なのだから、軽はずみな行動はつつしむように」
泣きながらも梨華は眼を見開いて母を見た。水軍を継ぐ者──今、母は確かにそう言った。
次の瞬間、ぎゅっと抱きしめられる感触。
「わかればいい。……無事でよかった」
梨華にも勇利にも伝わってくる。誰よりも自分たちを案じたのは母だと。
「あの時、加勢をしてくれて、剣を持ってきてくれてありがとう。二人の助力がなかったら、わたしは危なかった」
ケインという男は強かった。もし二人が来てくれなかったら、本当に右腕を失っていたかもしれない。
子供たちを抱きしめながら阿梨はふうっと息を吐いた。
壮麗なる海の都の、何と長い一日であったことか。
「二人とも疲れただろう。お腹は空いてないか? 何か軽く食べて、今夜は早く寝なさい」
こくんとうなずく子供たちに母は優しく語りかけた。
「罰の甲板掃除は明日からでよいからね」