第37話 不穏な手紙
文字数 587文字
フローレスなら以前にも来ている。だいたいの土地勘はあるはずだが、細い運河が複雑に入り組んだ迷路のような街だ。道に迷っているのだろうか。
が、利発なあの子たちなら迷ったとしても、地元の者に聞き聞きしてちゃんと帰ってこられるはずだ。
不吉な予感が背中を這い上ってきた、その時だ。
物資の調達に行っていた勇駿たちが戻ってきた。勇駿は阿梨を見るなり、桟橋から大声で呼びかける。
「勇利と梨華は船にいるか !?」
阿梨も甲板から身を乗り出して叫び返す。
「いいや、いない! 二人だけで街に出たらしい」
離れていても勇駿の動揺が伝わってきた。彼は蒼白な顔で渡し板を駆け登り、手にしていた紙を阿梨に渡した。
「これは?」
「とにかく読んでみてくれ」
言われるまま書きつけられた文面に視線を走らせる阿梨の顔色が、みるみるうちに変わていった。
「これをどこで……」
「港に戻って桟橋に向かおうとしていた時だ。見知らぬ子供から渡された。この船の者に書きつけを渡すようにと頼まれたらしい」
「その子供は何か知っていないのか !?」
「いや、たずねてみたが、ただ単に駄賃をもらって頼まれただけだと言っていた。地元の子供だ。おそらく無関係だろう」
阿梨はきつく唇を噛み、紙切れを握りしめた。
が、利発なあの子たちなら迷ったとしても、地元の者に聞き聞きしてちゃんと帰ってこられるはずだ。
不吉な予感が背中を這い上ってきた、その時だ。
物資の調達に行っていた勇駿たちが戻ってきた。勇駿は阿梨を見るなり、桟橋から大声で呼びかける。
「勇利と梨華は船にいるか !?」
阿梨も甲板から身を乗り出して叫び返す。
「いいや、いない! 二人だけで街に出たらしい」
離れていても勇駿の動揺が伝わってきた。彼は蒼白な顔で渡し板を駆け登り、手にしていた紙を阿梨に渡した。
「これは?」
「とにかく読んでみてくれ」
言われるまま書きつけられた文面に視線を走らせる阿梨の顔色が、みるみるうちに変わていった。
「これをどこで……」
「港に戻って桟橋に向かおうとしていた時だ。見知らぬ子供から渡された。この船の者に書きつけを渡すようにと頼まれたらしい」
「その子供は何か知っていないのか !?」
「いや、たずねてみたが、ただ単に駄賃をもらって頼まれただけだと言っていた。地元の子供だ。おそらく無関係だろう」
阿梨はきつく唇を噛み、紙切れを握りしめた。