第１０６話 「小遣い稼ぎも大変だ⑤」
文字数 2,254文字
リーダらしき、逞しいドワーフのパンチが、部下に炸裂。
騒然となる中……遂に、俺への誤解は……解けた。
俺が待たされた原因は単なる連絡ミスであった。
つまり、事故で言えば10対０でドワーフ側の完全な落ち度。
こうなると、さすがに誇り高いドワーフでも謝るしかない。
ドワーフの村テイワズの部族長イングヴァルが、俺に対して正式に謝罪し、村民へも説明が為されたのである。
筋を通してくれたので、俺も怒り続ける理由などない。
そして、またも役に立ってくれたのが、我が嫁お助け女神クッカ。
壊した岩壁も、教えて貰った地属性魔法で完全再生。
その部分だけ逆に綺麗且つ頑丈になったくらい。
晴れて村民の怒りも収まり、一転歓迎ムードになったのである。
ドワーフは、元々義理堅い性格だ。
そして、戦いでは力を信奉する。
知識と魔法を貴ぶエルフとは、ここでも対照的なのだ。
こうなると、拳で岩を打ち砕き、彼等の守護者である地の精霊 の魔法を使う俺は尊敬の眼差しを受ける事になったのである。
こんな場合、村では歓迎の宴が催される。
大勢の村民が、俺を取り囲む。
殺気がないから、全然良いと言っても、かがり火がたかれた中で100人以上に囲まれるのは完全にアウェーだ。
そしてなんやかんやで、時間はもう午後11時近い……
この時間から始まる宴会……
何か、ヤバイ雰囲気……
「まあ、飲め！」
部族長イングヴァルが、俺へ並々と酒を注いでくれた。
前世で言えば、ピッチャーに近い巨大ジョッキに、芳醇な琥珀色の液体が「たぷたぷ」と揺れている。
ドワーフと言えば酒。
酒と言えばドワーフ。
俺達ファンタジーファンの間では、最早お約束だ。
巨大ジョッキに注がれた酒は、香りと雰囲気からするにいかにも強そうな酒。
ちなみに俺は昔、度数の極端に強い酒をちょっぴり舐めてみた事がある。
確か、80度とか、もっと高い奴。
結果は……口から火を吹いてひっくり返りそうになった。
まあ口から火は単なる例えだが、それくらい強烈だったという事だ。
だが、俺は酒が嫌いではない。
というか、大好きだ。
でも、この異世界へ来て飲んだ事はない。
前にも言ったが、この世界の飲酒は16歳、結婚プラス付帯行動も16歳から……
何故ならば、その規律は創世神様の教えに基づいているから。
俺へ加護を与える、この世界の管理神様の一番の上席は創世神様。
で、あればその管理神様の使徒みたいな俺は孫弟子？
当然ながら、率先して創世神様の教えを守らないとまずい。
だから、酒もエッチも一生懸命我慢しているのだ。
だが……変身した今の俺は外見が20代半ばの大人。
いかにも、酒好きな冒険者。
この場は、断れば角が立ちそうだ。
そこまで俺は、空気読み人知らずではないし……どうしよう。
俺は、嫁に助けを求める。
『お～い、クッカ……どうしよう』
『う～ん、私なら断ります』
断る……そうか……
だよなぁ……クッカの言う通りだ。
この宴会は、今宵限りだろうし。
ドワーフ達と、普段生活しているわけでもない。
気まずくなっても……仕方がないだろう。
「えっと、申し訳ない……」
俺が、そう言いかけた時……
いきなり念話が響いたのだ。
『ちょ～っと、待った！』
その声は——管理神様！
『そうだよ～ん、ケン君、今回は特例だぴょ～ん！』
あの……だぴょ～ん、って……
ああ、軽い！
相変わらずノリが軽い！
でも、特例って何？
『説明するよ～ん、異民族同士の相互理解と親睦は僕が望むこの世界の安定へと繋がるよ～ん。だから僕の権限でこの場の飲酒は許可するよ～ん』
……そうですか、成る程。
でも助かった！
これで、角を立てずに済む。
管理神様に、御礼を言わないといかん。
『恩に着ます！ 管理神様、ありがとうございます！』
『はっは～、まったね～』
例によって管理神様は言いたい事言って、用が済んだら帰って行った。
でも、これで酒を堂々と飲める。
飲めるけど……これはドワーフの作った高アルコール度数の酒。
このまま、まともに飲んだら死ぬ。
何か対策しないとヤバイ。
こんな時は……
『クッカ！』
『はい、は～い。管理神様がOKならばお任せくださ～い。まずは底なし酒のスキルを習得しましょう』
『底なし酒？』
『はい、最初にぺろっと舐めて、気が遠くなりそうになるのを耐えれば習得でっす』
……成る程。
そりゃ、便利だ。
『後は念の為に、毒消しの魔法も掛けましょう』
ああ、それも納得。
毒消しの魔法とは体内へ入った毒を無毒にする魔法。
アルコールは決して毒ではないが、応用するという事だな。
俺はクッカに言われた通り、ドワーフの酒をひと口だけ含んでみた。
予想以上に強烈だった。
昔、飲んだ酒以上。
これ、90度以上あるんじゃね？
簡単に、意識が持っていかれそうになる。
しかし何とか耐えて、スキル習得。
やったね！
そして解毒の魔法も発動！
完全な『対策』を施した俺が90度の酒をぐいぐい飲むのを見たイングヴァルはにっこり笑って、お代わりを注いでくれたのである。
ちなみに常人の皆様は絶対に真似をしないよう、重ね重ねお願いしておきます。
騒然となる中……遂に、俺への誤解は……解けた。
俺が待たされた原因は単なる連絡ミスであった。
つまり、事故で言えば10対０でドワーフ側の完全な落ち度。
こうなると、さすがに誇り高いドワーフでも謝るしかない。
ドワーフの村テイワズの部族長イングヴァルが、俺に対して正式に謝罪し、村民へも説明が為されたのである。
筋を通してくれたので、俺も怒り続ける理由などない。
そして、またも役に立ってくれたのが、我が嫁お助け女神クッカ。
壊した岩壁も、教えて貰った地属性魔法で完全再生。
その部分だけ逆に綺麗且つ頑丈になったくらい。
晴れて村民の怒りも収まり、一転歓迎ムードになったのである。
ドワーフは、元々義理堅い性格だ。
そして、戦いでは力を信奉する。
知識と魔法を貴ぶエルフとは、ここでも対照的なのだ。
こうなると、拳で岩を打ち砕き、彼等の守護者である
こんな場合、村では歓迎の宴が催される。
大勢の村民が、俺を取り囲む。
殺気がないから、全然良いと言っても、かがり火がたかれた中で100人以上に囲まれるのは完全にアウェーだ。
そしてなんやかんやで、時間はもう午後11時近い……
この時間から始まる宴会……
何か、ヤバイ雰囲気……
「まあ、飲め！」
部族長イングヴァルが、俺へ並々と酒を注いでくれた。
前世で言えば、ピッチャーに近い巨大ジョッキに、芳醇な琥珀色の液体が「たぷたぷ」と揺れている。
ドワーフと言えば酒。
酒と言えばドワーフ。
俺達ファンタジーファンの間では、最早お約束だ。
巨大ジョッキに注がれた酒は、香りと雰囲気からするにいかにも強そうな酒。
ちなみに俺は昔、度数の極端に強い酒をちょっぴり舐めてみた事がある。
確か、80度とか、もっと高い奴。
結果は……口から火を吹いてひっくり返りそうになった。
まあ口から火は単なる例えだが、それくらい強烈だったという事だ。
だが、俺は酒が嫌いではない。
というか、大好きだ。
でも、この異世界へ来て飲んだ事はない。
前にも言ったが、この世界の飲酒は16歳、結婚プラス付帯行動も16歳から……
何故ならば、その規律は創世神様の教えに基づいているから。
俺へ加護を与える、この世界の管理神様の一番の上席は創世神様。
で、あればその管理神様の使徒みたいな俺は孫弟子？
当然ながら、率先して創世神様の教えを守らないとまずい。
だから、酒もエッチも一生懸命我慢しているのだ。
だが……変身した今の俺は外見が20代半ばの大人。
いかにも、酒好きな冒険者。
この場は、断れば角が立ちそうだ。
そこまで俺は、空気読み人知らずではないし……どうしよう。
俺は、嫁に助けを求める。
『お～い、クッカ……どうしよう』
『う～ん、私なら断ります』
断る……そうか……
だよなぁ……クッカの言う通りだ。
この宴会は、今宵限りだろうし。
ドワーフ達と、普段生活しているわけでもない。
気まずくなっても……仕方がないだろう。
「えっと、申し訳ない……」
俺が、そう言いかけた時……
いきなり念話が響いたのだ。
『ちょ～っと、待った！』
その声は——管理神様！
『そうだよ～ん、ケン君、今回は特例だぴょ～ん！』
あの……だぴょ～ん、って……
ああ、軽い！
相変わらずノリが軽い！
でも、特例って何？
『説明するよ～ん、異民族同士の相互理解と親睦は僕が望むこの世界の安定へと繋がるよ～ん。だから僕の権限でこの場の飲酒は許可するよ～ん』
……そうですか、成る程。
でも助かった！
これで、角を立てずに済む。
管理神様に、御礼を言わないといかん。
『恩に着ます！ 管理神様、ありがとうございます！』
『はっは～、まったね～』
例によって管理神様は言いたい事言って、用が済んだら帰って行った。
でも、これで酒を堂々と飲める。
飲めるけど……これはドワーフの作った高アルコール度数の酒。
このまま、まともに飲んだら死ぬ。
何か対策しないとヤバイ。
こんな時は……
『クッカ！』
『はい、は～い。管理神様がOKならばお任せくださ～い。まずは底なし酒のスキルを習得しましょう』
『底なし酒？』
『はい、最初にぺろっと舐めて、気が遠くなりそうになるのを耐えれば習得でっす』
……成る程。
そりゃ、便利だ。
『後は念の為に、毒消しの魔法も掛けましょう』
ああ、それも納得。
毒消しの魔法とは体内へ入った毒を無毒にする魔法。
アルコールは決して毒ではないが、応用するという事だな。
俺はクッカに言われた通り、ドワーフの酒をひと口だけ含んでみた。
予想以上に強烈だった。
昔、飲んだ酒以上。
これ、90度以上あるんじゃね？
簡単に、意識が持っていかれそうになる。
しかし何とか耐えて、スキル習得。
やったね！
そして解毒の魔法も発動！
完全な『対策』を施した俺が90度の酒をぐいぐい飲むのを見たイングヴァルはにっこり笑って、お代わりを注いでくれたのである。
ちなみに常人の皆様は絶対に真似をしないよう、重ね重ねお願いしておきます。
