第１１５話 「魔王軍侵攻せり②」
文字数 2,130文字
俺とクッカの索敵によれば、押し寄せる敵の数は……約300体。
倒したから『登録』されたらしいが、反応は全部スケルトン。
『勇気』のスキルのお陰なのは確かであるが、スケルトンならそんなに怖くはない。
さっき見た限りでは、理科室の骨格標本と変わらないから。
死霊術師が使役する魔物といえば、スケルトンは勿論の事、ゾンビや悪霊が定番。
だが、ゾンビは居ない。
悪霊もなし。
何か、事情があるのだろうか。
クッカほどではないが、俺もゾンビとは出来るだけ戦いたくない。
元々ホラー映画苦手だし、ゾンビなんて見るだけでも嫌だ。
安全な部屋で行う、コントローラーだけ使うゲームとは違う。
武器を介しても実際に奴等に触らなくちゃいけないし、当然臭いもきついだろうし。
ああ、魔法で全部倒せば良いか……
まあ、良いや、ゾンビの事は。
居ない奴の事は考えてもしょうがね～、今はパスパス。
えっと、スケルトンだが、強さは念の為……一般兵士より5割増しの強靭な戦士300人が相手だと考えておけば良いかな。
俺がそんな事を「つらつら」と考えていたら、クッカが安堵の溜息を吐く。
『はぁ……ゾンビが居なくてホッとしました』
『おお、クッカ、良かったな』
俺が言葉を掛けるとクッカの奴、「にこっ」と微笑んだ。
まだ体調は『いまさん』くらいのようだが、通常モードにてアドバイスをくれそうである。
『はい！ 油断は禁物です！ ですが、相手がスケルトンならば、多分物理攻撃だけしか来ません。司令官か、親玉か分かりませんが、死霊術師の魔法だけに気をつければ楽勝でしょう』
『へぇ、強気だな』
『はい！ スケルトン300体など、旦那様の敵ではありません。まあ少なくとも1万体ぐらい居ないと、抵抗するのも無理でしょう。それよりも今回は旦那様に採用して欲しい戦い方があります』
『何？ どんな戦い方？』
『通常の戦い以外に、至近距離で、属性魔法の連発を入れて欲しいですね』
通常の術者の場合、魔法発動には少々時間がかかる。
言霊の詠唱を開始して終了、そして魔法が放たれるまで若干のタイムラグが生じるのだ。
しかし俺は無詠唱で魔法を連発出来る。
『剣技、天界拳、そして魔法の３つを組み合わせての無双スタイル。これこそ私の認める完璧な魔法剣士の戦い方です』
おお、魔法剣士か！
俺にとって何という素晴らしい響きだろう。
様々な本によれば、通常の魔法剣士は魔法剣を携えて戦うという。
剣に属性魔法を宿し、どのような相手とも戦える万能の戦士なのだ。
俺の場合は剣技だけではなく、天界拳という格闘技と遠近で放つ魔法も武器とする超万能戦士といえる。
『火と風の魔法を連発し、剣と天界拳を組み合わせて上手く戦いましょう』
『了解！』
ああ、完璧な魔法剣士。
クッカが認める、超万能戦士！
何という素晴らしい響き！
俺の中二病が、全開となる予感……
実際に戦えば、更に実感が湧くだろう。
よっし、気合が入って来たぞ。
俺は、戦う為にスタンバイする。
行進して来たスケルトン軍団は、俺とクッカから20mくらいの距離まで迫るとぴたりと止まった。
洞窟の小さな『広間』は、一杯になる。
最後方に、大きな気配を感じるが……
と、その時。
スケルトン軍団の隊列が左右に「さっ」と分かれた。
正面に、誰か居る。
どうやら、大声で笑っているようだ。
「ふひゃははは！ 何だ、たったひとりか？ おお、顔と出で立ちは違うが分かる！ お前が勇者ケンだな！」
大きな気配って……こいつだ！
こいつが『親玉』なんだ。
そして俺を知っている！
どんな奴かと見れば、黒ずくめの法衣 を着込んでいる小柄な男であった。
フードを深く被っていて、顔は良く分からない。
だが、いかにも怪しい出で立ちだ。
声がしわがれていて、年齢は想像がつく。
相当な、年寄りだろう。
「お前の魔力から放出するオーラ、リリアンから聞いたぞ！ 儂はバルカン、魔王軍ナンバースリーの魔法使いだ」
バルカンが俺を完全に舐めているのは、堂々と名乗った事からも分かる。
まあ馬鹿にされても、俺はプライドが高くない。
だから、別に気にしないし、油断してくれるなら尚更OKだ。
でも、やっとナンバースリーかい。
この前倒した変態狼男がそれぞれナンバーフォーを自称してしたから、その上の奴だ。
となると、残るは魔王とその片腕か？
「魔王軍ナンバースリーだと？ お前の目的は何だ？」
俺は、お約束の台詞 を吐く。
リリアンが言った事を、しっかり裏付ける為でもある。
「目的？ ひゃははは、魔王様の命令に決まっている。そうでなきゃこんな田舎へ来るか！」
「やっぱり魔王の命令か！」
俺を捕らえる。
その為に、俺と関係あるこの村を排除する。
村民は皆殺し……
それが、あの夢魔リリアンの言葉だった。
俺は遂に恐れていた事が現実になったと、唇を噛み締めたのであった。
倒したから『登録』されたらしいが、反応は全部スケルトン。
『勇気』のスキルのお陰なのは確かであるが、スケルトンならそんなに怖くはない。
さっき見た限りでは、理科室の骨格標本と変わらないから。
死霊術師が使役する魔物といえば、スケルトンは勿論の事、ゾンビや悪霊が定番。
だが、ゾンビは居ない。
悪霊もなし。
何か、事情があるのだろうか。
クッカほどではないが、俺もゾンビとは出来るだけ戦いたくない。
元々ホラー映画苦手だし、ゾンビなんて見るだけでも嫌だ。
安全な部屋で行う、コントローラーだけ使うゲームとは違う。
武器を介しても実際に奴等に触らなくちゃいけないし、当然臭いもきついだろうし。
ああ、魔法で全部倒せば良いか……
まあ、良いや、ゾンビの事は。
居ない奴の事は考えてもしょうがね～、今はパスパス。
えっと、スケルトンだが、強さは念の為……一般兵士より5割増しの強靭な戦士300人が相手だと考えておけば良いかな。
俺がそんな事を「つらつら」と考えていたら、クッカが安堵の溜息を吐く。
『はぁ……ゾンビが居なくてホッとしました』
『おお、クッカ、良かったな』
俺が言葉を掛けるとクッカの奴、「にこっ」と微笑んだ。
まだ体調は『いまさん』くらいのようだが、通常モードにてアドバイスをくれそうである。
『はい！ 油断は禁物です！ ですが、相手がスケルトンならば、多分物理攻撃だけしか来ません。司令官か、親玉か分かりませんが、死霊術師の魔法だけに気をつければ楽勝でしょう』
『へぇ、強気だな』
『はい！ スケルトン300体など、旦那様の敵ではありません。まあ少なくとも1万体ぐらい居ないと、抵抗するのも無理でしょう。それよりも今回は旦那様に採用して欲しい戦い方があります』
『何？ どんな戦い方？』
『通常の戦い以外に、至近距離で、属性魔法の連発を入れて欲しいですね』
通常の術者の場合、魔法発動には少々時間がかかる。
言霊の詠唱を開始して終了、そして魔法が放たれるまで若干のタイムラグが生じるのだ。
しかし俺は無詠唱で魔法を連発出来る。
『剣技、天界拳、そして魔法の３つを組み合わせての無双スタイル。これこそ私の認める完璧な魔法剣士の戦い方です』
おお、魔法剣士か！
俺にとって何という素晴らしい響きだろう。
様々な本によれば、通常の魔法剣士は魔法剣を携えて戦うという。
剣に属性魔法を宿し、どのような相手とも戦える万能の戦士なのだ。
俺の場合は剣技だけではなく、天界拳という格闘技と遠近で放つ魔法も武器とする超万能戦士といえる。
『火と風の魔法を連発し、剣と天界拳を組み合わせて上手く戦いましょう』
『了解！』
ああ、完璧な魔法剣士。
クッカが認める、超万能戦士！
何という素晴らしい響き！
俺の中二病が、全開となる予感……
実際に戦えば、更に実感が湧くだろう。
よっし、気合が入って来たぞ。
俺は、戦う為にスタンバイする。
行進して来たスケルトン軍団は、俺とクッカから20mくらいの距離まで迫るとぴたりと止まった。
洞窟の小さな『広間』は、一杯になる。
最後方に、大きな気配を感じるが……
と、その時。
スケルトン軍団の隊列が左右に「さっ」と分かれた。
正面に、誰か居る。
どうやら、大声で笑っているようだ。
「ふひゃははは！ 何だ、たったひとりか？ おお、顔と出で立ちは違うが分かる！ お前が勇者ケンだな！」
大きな気配って……こいつだ！
こいつが『親玉』なんだ。
そして俺を知っている！
どんな奴かと見れば、黒ずくめの
フードを深く被っていて、顔は良く分からない。
だが、いかにも怪しい出で立ちだ。
声がしわがれていて、年齢は想像がつく。
相当な、年寄りだろう。
「お前の魔力から放出するオーラ、リリアンから聞いたぞ！ 儂はバルカン、魔王軍ナンバースリーの魔法使いだ」
バルカンが俺を完全に舐めているのは、堂々と名乗った事からも分かる。
まあ馬鹿にされても、俺はプライドが高くない。
だから、別に気にしないし、油断してくれるなら尚更OKだ。
でも、やっとナンバースリーかい。
この前倒した変態狼男がそれぞれナンバーフォーを自称してしたから、その上の奴だ。
となると、残るは魔王とその片腕か？
「魔王軍ナンバースリーだと？ お前の目的は何だ？」
俺は、お約束の
リリアンが言った事を、しっかり裏付ける為でもある。
「目的？ ひゃははは、魔王様の命令に決まっている。そうでなきゃこんな田舎へ来るか！」
「やっぱり魔王の命令か！」
俺を捕らえる。
その為に、俺と関係あるこの村を排除する。
村民は皆殺し……
それが、あの夢魔リリアンの言葉だった。
俺は遂に恐れていた事が現実になったと、唇を噛み締めたのであった。
