第８８話 「女神と美少女の共通項⑨」
文字数 2,145文字
クッカの提案はこの世界の価値観において、とんでもなく恐れ多いという事になるらしい。
「えええっ！？ クッカ様を呼び捨てなんて、絶対に無理ですよ」
「構わないのよ」
「と、仰いましても無理です。バチが当たります」
「バチなんか当てないわ、構わないの！」
ああ、ヤバイ。
会話が不毛になって来た。
このまま押し問答になっては、どちらにしてもまずい。
ここで、賢いリゼットは機転を利かせたのである。
「い、いえ……でも……じゃ、じゃあ……本当に恐れ多いですが……村の年上の女の子を呼ぶ呼び方では？」
「え？ 村の年上の女の子を呼ぶ呼び方？ ど、どう呼ぶの？ 教えて！」
新たな提案を聞いたクッカ。
凄い喰いつきだ。
俺と同様、さっきからの会話に不毛さを感じていたのだろう。
リゼットは、クッカの勢いに気圧されている。
盛大に、噛んで答えていた。
「は、は、はいっ！ で、では！ ク、ク、クッカ姉 は……ど、どうですか？」
リゼットにとっては、恐れ多くも単なる人間から天界の女神への提案。
果たして……結果は……
「クッカ姉！ おお、クッカ姉ね！ 良い響き、それ良いわっ！」
クッカの魂が、喜びで満ちている。
自分が家族になる、実感が湧いているのだろう。
意外ともいえるクッカの反応に、リゼットは戸惑いを見せる。
「そ、そんなに……良かったですか？」
「うん！ 私がリゼットちゃんのお姉さん……か！ うふふ、分かった、全然OKよ」
「あはっ！ 良かったぁ」
折衷案は、無事に受け入れられた。
大きく息を吐いて安心したリゼットも、凄く嬉しそうだ。
いよいよ、準備完了！
クッカは、いきなりエンジン全開の話しっぷりである。
「じゃあ、クッカ姉さんが手解 きしますよぉ！ ええっと、まずはララルーレ。 この花を乾燥させて飲むと様々な症状に効果があると言われます。風邪以外に鎮静、発汗にも良いですね」
「あ、ああっ！」
ララルーレと聞いたリゼットは、何かを思い出したらしい。
「ど、どうしたの？」
「この前！ お祖母ちゃんの風邪対策で旦那様がここから色々ハーブ持って来てくれた時って……もしかしてクッカ姉が旦那様へアドバイスしてくれたのですか？」
「うっふふふ、ピンポン！ ピンポン！ ピンポン！ これからも任っせなさ～い」
「わぁお！ あ、ありがとうございますぅ！」
「うふふふ」
おお、麗しき姉と可憐な妹の会話。
美しい！
それから……
クッカとリゼットのハーブ談義は、凄く盛り上がった。
リゼットは、本当に良い子だ。
ふたりともハーブに関してはオタクと言って良い位詳しいが、リゼットは自分が知っている事でも敢えてクッカに教えを請うた。
リゼットは相手を気遣い、「立てる」事を良く知っている。
そして笑顔ではきはきと返事をして、相手の話を素直に良く聞く。
これって簡単そうに見えるが、結構難しい。
だけどまず聞き役に徹する事が初対面の相手と上手く折り合い、仲良くなるコツだと思う。
こんな子は、誰にでも好かれる。
その上、典型的な『妹キャラ』だから皆に可愛がられるのだろう。
「うふふ、いつまでも話は尽きないけど、そろそろハーブを採集しましょうか？」
「はいっ！」
クッカ（外見は俺）とリゼットふたりは、色とりどりの花が咲き乱れる様々なハーブを指差ししながら、必要なハーブを摘んで行く。
「こんなものかしら？」
「そうですね、お姉様」
最初は小規模なハーブ園で……巻き添えを食って俺が目立つ事なんて絶対にないように。
ふたりの意思は、同じである。
そして最後の話題は……何と俺の事になってしまう。
「私、旦那様が大好きなんですよ」
まずはクッカが、口火を切った。
一方、リゼットも負けてはいない。
「私もです！ クッカ姉は旦那様のどこが好きなんですか？」
「全部！ かな？」
「あ～っ、私も全部ですよ。でも敢えて言えば、どこですか？」
「強くて誰にでも優しい所！ 年配の同性に好かれるのもポイント高いわ」
「同じです！ 後は好き嫌いがなくて、私達が作ったご飯を何でも、もりもり元気に食べる所も！」
またもや盛り上がる、クッカとリゼット。
どこからともなく俺の耳には、「爆発しろ！」という声が何度もたくさん聞こえたような気がした。
「クッカ姉……ミシェル姉の言葉って憶えていますか？」
「ええ！ 憶えているわ」
俺だって、憶えている。
ミシェルは、言った。
早く家族の皆で暮らしたいと！
※第47話参照
「私も同じ気持ちです！ 少しでも早くお会いして一緒に暮らして行きたいのです」
クッカは、リゼットをじっと見つめる。
「ありがとう！」
俺の身体を借りたクッカは、また泣いていた。
リゼットの気持ちが嬉しくて、そっと泣いていた。
対するリゼットの目にも、大粒の涙が浮かんでいる。
そして、俺も……
ふたりの美少女嫁の優しい気持ちに触れて、つい貰い泣きしてしまったのであった。
「えええっ！？ クッカ様を呼び捨てなんて、絶対に無理ですよ」
「構わないのよ」
「と、仰いましても無理です。バチが当たります」
「バチなんか当てないわ、構わないの！」
ああ、ヤバイ。
会話が不毛になって来た。
このまま押し問答になっては、どちらにしてもまずい。
ここで、賢いリゼットは機転を利かせたのである。
「い、いえ……でも……じゃ、じゃあ……本当に恐れ多いですが……村の年上の女の子を呼ぶ呼び方では？」
「え？ 村の年上の女の子を呼ぶ呼び方？ ど、どう呼ぶの？ 教えて！」
新たな提案を聞いたクッカ。
凄い喰いつきだ。
俺と同様、さっきからの会話に不毛さを感じていたのだろう。
リゼットは、クッカの勢いに気圧されている。
盛大に、噛んで答えていた。
「は、は、はいっ！ で、では！ ク、ク、クッカ
リゼットにとっては、恐れ多くも単なる人間から天界の女神への提案。
果たして……結果は……
「クッカ姉！ おお、クッカ姉ね！ 良い響き、それ良いわっ！」
クッカの魂が、喜びで満ちている。
自分が家族になる、実感が湧いているのだろう。
意外ともいえるクッカの反応に、リゼットは戸惑いを見せる。
「そ、そんなに……良かったですか？」
「うん！ 私がリゼットちゃんのお姉さん……か！ うふふ、分かった、全然OKよ」
「あはっ！ 良かったぁ」
折衷案は、無事に受け入れられた。
大きく息を吐いて安心したリゼットも、凄く嬉しそうだ。
いよいよ、準備完了！
クッカは、いきなりエンジン全開の話しっぷりである。
「じゃあ、クッカ姉さんが
「あ、ああっ！」
ララルーレと聞いたリゼットは、何かを思い出したらしい。
「ど、どうしたの？」
「この前！ お祖母ちゃんの風邪対策で旦那様がここから色々ハーブ持って来てくれた時って……もしかしてクッカ姉が旦那様へアドバイスしてくれたのですか？」
「うっふふふ、ピンポン！ ピンポン！ ピンポン！ これからも任っせなさ～い」
「わぁお！ あ、ありがとうございますぅ！」
「うふふふ」
おお、麗しき姉と可憐な妹の会話。
美しい！
それから……
クッカとリゼットのハーブ談義は、凄く盛り上がった。
リゼットは、本当に良い子だ。
ふたりともハーブに関してはオタクと言って良い位詳しいが、リゼットは自分が知っている事でも敢えてクッカに教えを請うた。
リゼットは相手を気遣い、「立てる」事を良く知っている。
そして笑顔ではきはきと返事をして、相手の話を素直に良く聞く。
これって簡単そうに見えるが、結構難しい。
だけどまず聞き役に徹する事が初対面の相手と上手く折り合い、仲良くなるコツだと思う。
こんな子は、誰にでも好かれる。
その上、典型的な『妹キャラ』だから皆に可愛がられるのだろう。
「うふふ、いつまでも話は尽きないけど、そろそろハーブを採集しましょうか？」
「はいっ！」
クッカ（外見は俺）とリゼットふたりは、色とりどりの花が咲き乱れる様々なハーブを指差ししながら、必要なハーブを摘んで行く。
「こんなものかしら？」
「そうですね、お姉様」
最初は小規模なハーブ園で……巻き添えを食って俺が目立つ事なんて絶対にないように。
ふたりの意思は、同じである。
そして最後の話題は……何と俺の事になってしまう。
「私、旦那様が大好きなんですよ」
まずはクッカが、口火を切った。
一方、リゼットも負けてはいない。
「私もです！ クッカ姉は旦那様のどこが好きなんですか？」
「全部！ かな？」
「あ～っ、私も全部ですよ。でも敢えて言えば、どこですか？」
「強くて誰にでも優しい所！ 年配の同性に好かれるのもポイント高いわ」
「同じです！ 後は好き嫌いがなくて、私達が作ったご飯を何でも、もりもり元気に食べる所も！」
またもや盛り上がる、クッカとリゼット。
どこからともなく俺の耳には、「爆発しろ！」という声が何度もたくさん聞こえたような気がした。
「クッカ姉……ミシェル姉の言葉って憶えていますか？」
「ええ！ 憶えているわ」
俺だって、憶えている。
ミシェルは、言った。
早く家族の皆で暮らしたいと！
※第47話参照
「私も同じ気持ちです！ 少しでも早くお会いして一緒に暮らして行きたいのです」
クッカは、リゼットをじっと見つめる。
「ありがとう！」
俺の身体を借りたクッカは、また泣いていた。
リゼットの気持ちが嬉しくて、そっと泣いていた。
対するリゼットの目にも、大粒の涙が浮かんでいる。
そして、俺も……
ふたりの美少女嫁の優しい気持ちに触れて、つい貰い泣きしてしまったのであった。
