第24話 メイジマタンゴのピザ
文字数 2,447文字
タリーと貴史はキノコの魔物を捕獲しようと飛び出していったヤースミーンの後を追った。一人で戦いを挑んで逆襲されることを心配したのだ。
しかし、二人がギルガメッシュを出ていくらも進まないうちに調子はずれな鼻歌が聞こえてきた。
タリーと貴史は凱旋するヤースミーンを少し引き気味に出迎えた。
厨房で調理を始めたタリーはよく切れる包丁でメイジマタンゴの手と足を切り落としながら言う。
貴史はタリーの指示に従ってピザの生地をよくこねて寝かせたところだ。
貴史は受け取るとギルガメッシュの地下室までメイジマタンゴのぶつ切りを運んだ。
見ようによっては魔物のバラバラ死体が入ったコンテナだ。
それを運びながら、貴史はさっきのタリーとヤースミーンの会話を反芻する。
そして地下室に着いた頃には彼らを使ったエレファントキング打倒のための作戦が思い浮かんでいた。
貴史がギルガメッシュの厨房に戻ってみるとヤースミーンとタリーは口論していた。
俺も死ぬ事を前提に戦うわけではないよと思いながら貴史は黙ってうなずいた
キングパオーム打倒の作戦が決まったので三人は再びメイジマタンゴのピザ作りに戻った。
タリーがメイジマタンゴのぶつ切りを一口大にスライスすると、それはいつしか食べ物らしく見えてきた。
タリーは発酵したピザ生地を薄くのばすと最後は放り投げながら回転させた。ピザ生地は遠心力で見事に広がる。
タリー大きなピザ生地が出来たところにオリーブオイルを塗り、その上にスライスしたメイジマタンゴを敷き詰めた。そして最後にチーズを散らす。
今回はメイジマタンゴの風味を楽しみたいというタリーの希望でプレーンなキノコピザになったのだ。
午前中から内部で火をたき加熱した石窯はほどよい温度になっていた。タリーはビザを石窯に入れると丈夫な扉を閉めた。
ヤースミーンは再びオリジナルピザソングを歌い始める。
しばらくしてからタリーは石窯の扉を開いた。
中から出てきたのはこんがりと焼けたキノコピザだった。
ヤースミーンが歓声を上げる中、タリーがピザをカットし各々がピザを楽しんだ。松茸を思わせるキノコの香りと溶けたチーズ。そして外側はぱりっと焼け内側はふっくらと焼けた生地は絶妙な味だ。
感動するタリーだけでなく、貴史とヤースミーンもピザの味を楽しんだ。
三人が大きなピザをあらかた食べ終わった頃、島田は森への道を沢山のヒマリア軍の騎士達が行軍しているのに気がついた。
日頃から、レイナ姫の元にはせ参じようとする騎士達は見かけるのだが、今日はひときわ数が多い。
貴史の言葉にヤースミーンも心配そうな表情をしている。
ヤースミーンが質問すると、先ほどから考え込んでいたタリーはおもむろに口を開いた。
ヤースミーンはこけた。
貴史は魔物料理の考案に没頭するあまり人の話も聞いていなかったタリーに苦笑するしかなかった。