第41話 ギルガメッシュ繁盛記
文字数 2,576文字
ギルガメッシュの酒場は大勢の商人で賑わっていた。
商人たちはドラゴンの鱗や皮、そして腱や骨に至るまでを工芸品の材料として買い付けに来たのだ。
貴史たちはヒマリア国の王都イアトぺスまでハインリッヒ王に招かれたが、帰りの道中で貴史たちは村を襲っていたグリーンドラゴンに遭遇した。
そのドラゴンは森の奥で近隣のドラゴンハンターチームが手傷を追わして取り逃がし、逆襲して村に襲い掛かっていた。
貴史たちは鮮やかにドラゴンを倒し、それを見たドラゴンハンターのチームから移籍を申し出る人々が詰めかけた。貴史を刃刺しとして崇拝する新チームが出来上がったのだ。
そして、チーム「シマダタカシ」はつい最近も南の森まで遠征してレッドドラゴンを倒したばかりだ。
ギルガメッシュはチーム「シマダタカシ」が倒したドラゴンの交易拠点として賑わう場となっていた。
チームのまとめ役のリヒターが貴史を追いかけながら話しかける。
貴史はタリーに頼まれてドラゴンの背肉の塊を地下倉庫に取りに行くところだ。
貴史はため息をついた。
貴史にしてもドラゴンを倒して蓄えがある間はのらくら暮らしたいのはやまやまだが、ヤースミーンがそれを良しとしないのだ。
刃刺しとしての貴史の能力は、ヤースミーンの支援魔法に頼る部分が大きいので、彼女の意向は無下にできない。
そこまで感心されると何だかくすぐったい感じだが、貴史はもっともらしい顔をしてリヒターにうなずいて見せる。
地下一階の通路に降りて、肉の貯蔵庫を目指して歩いていて、貴史は通路の壁に描いている落書きが目に留まった。
貴史はこの世界に転移した時に言葉や文字は理解できるようになっていた。それなのに地下通路の落書きは一文字も読むことができない。
貴史が怪訝な顔で落書きを見ていると。一回から降りてくる階段からヤースミーンの声が響いてきた。
ヤースミーンは様子を見にきたらしく、階段を駆け下りてくる。
ギルガメッシュの酒場のウエイトレスの昼間の制服となっているメイド服姿だ。
ヤースミーンは壁の文字を目を細めて読み始める。
貴史はそれぞれの落書きの末尾の辺りを眺めた。そう言われてみれば同じ文字の並びがあるようだ。
貴史がなおも壁の文字を見ていると、ヤースミーンはパンパンと両手をたたいた。
やばい、これ以上もたついていたら怒られる。
貴史はリヒターを促して冷蔵室をめがけて駆け出した。
両手を腰に当てて貴史たちを見送りながら、ヤースミーンは鼻から息を吐きだした。
貴史は夜も更けて酒場の営業が終わり、従業員の食事の時間になった時タリーに尋ねた。
タリーはきょとんとした顔で答える。
貴史の言葉にマルグリットとノラは驚いた顔をする。
二人ともトリプルベリーの街から来て、住み込みのウエイトレスとして働いている。
ヤースミーンを含めた女性3人はバニーガールのコスチュームを着ている。タリーの趣味でディナータイムの制服として街の仕立て屋にオーダーしたものだ。
ノラは指を立てて振って見せた。
タリーの顔がこわ張る。