第17話 パープルラビットスレイヤーズ
文字数 2,163文字
手作りのクロスボウをセットアップしながらタリーが言う。いつの間にか自分用も作ったらしく、使用可能なクロスボウは二挺に増えている。
貴史が心配していたことを口にすると、タリーは懐からなにやら取り出して貴史の前にかざした。ジャーンという効果音自分でで言いそうな勢いだ。
タリーは上機嫌で支度を続けた。貴史も戦士用の篭手や胸当てを着けながらヤースミーンに尋ねた。
魔導師のローブに着替えて待機しているヤースミーンも少し心配そうに答える。
貴史がブレイズの剣を背中に背負おうとしていると、タリーがクロスボウと一緒に倉庫から持ってきていたものを貴史に差し出した。
貴史は受け取ったカタナを調べてみた。見たところは日本刀だ。
鞘から中身が滑り出さないように金具が着けてあるのも同じようだ。
タリーは貴史がいた世界とは違う歴史を歩んだ世界で日本に相当する国にいたようだ。貴史はパチンと留め具を外すと日本刀を抜いてみた。
鈍く光る刀身には規則正しい波紋が見えた。その波紋は刀の裏表できれいに揃っている。貴史はザワッと鳥肌だつのを意識した。
刀の刃渡りは七十センチメートルほどで,振り回すのに手頃な長さだ。
貴史はこの世界にも日本に相当する国があるのだろうかとぼんやり考えながら刀を鞘に納めた。
タリーはその様子を見て微笑む。
タリーがどうしようかというように貴史とヤースミーンの顔を見るのでヤースミーンが口を開いた。
バンビーナは元気に答えた。
準備が出来た一行は、深夜の荒野を抜け森に差し掛かった。先頭を行くのはタリーで、貴史は荷車を引いていた。
ヤースミーンとバンビーナは荷車の荷台のへりに腰掛けて、おしゃべりに興じていた。どうやらオラフや自分の子供時代のことで盛り上がっているようだ。
貴史はオラフの顔を思い浮かべながら悪ガキだったんだなあと思って苦笑した。
そして、バンビーナはオラフに会いたくて就いてきたのではないだろうかと考えて、彼女の表情を伺ってみた。
夜とはいっても満月が中天にかかっている。草原の道を歩く分には不安がないほど明るかったが。森の中では、道の在処がやっと判る程度だ。
森の中をしばらく進むと、タリーはポケットから魔封じのお守りを取り出して首にかけた。
道の周囲の森の中からは、何者かが落ち葉を踏むカサカサという音が聞こえている。
貴史が振り返って告げると、ヤースミーンも矢を装填済みのクロスボウを手に取って立ちあがった。
貴史が前方に目を移してタリーにも声をかけようとすると、タリーは突然立ち止まった。
何かあったのかと、貴史が緊張した時、タリーは膝を折って崩れおちる。
貴史が駆け寄って抱き起こしてみると、タリーは寝ていタ。貴史はタリーを肩に担いで荷車に戻りながら叫んだ。
だが、声をかけても無駄だった。