第121話 パールバティー号の航海
文字数 3,194文字
光線は鍋に当たる部分で青白い炎に変わり、ガスバーナーのように鍋を加熱している。
ヤースミーンは懸命に目を見開いていたが、やがてその目は閉じて行き杖から伸びる光線は大鍋から逸れて行こうとした。
かつて、壮絶な戦いを繰り広げた宿敵同士が魔物の皮でバッグを作る話をしているのは平和で微笑ましい。
シーサーペントの皮はうろこの隙間を狙っても貴史やハヌマーンが刺し貫くのに苦労したくらい丈夫なもので、重量も軽いため鎧の材質には向いていると言えた。
そして、タリーはムネモシュネの侍女のバルカと相談し、皮目の模様から判断してハンドバッグ用の部分と鎧に回す部分を線引きして分配を始めるのだった。
そして、ヤンを誘うと食糧確保のためと名目を作って釣りをすることにした。
タリーはパロの港で釣り竿や釣り針、そして釣り糸を仕入れていたのだ。
タリーの作ったルアーは相当な性能を発揮し、貴史達がしばらく釣り糸を垂れていると、ヤンの竿と貴史の竿が立て続けに大きくしなった。
手の空いていた船員が大きな網ですくいあげると、その魚は丸い頭をした鮮やかな青い色の魚だった。
そしてその体長は一メートル近くある。
内陸の北国育ちのヤースミーン達に正しい名前を教えなければと思い、貴史はどうにかその魚の名前を思い出した。
タリーはホルストのための鎧の製作を続けていたらしく床の上にはシーサーペントの皮の断片が散らばっている。
やがて、ホルストが仮組みした鎧を身に着けて皆の前に姿を現した。
そして腕や足、頭にはシーサーペントの背側の硬い部分を使って手甲やヘルメットを装備していた。
トータルなデザインとしてはアルマジロにそっくりな姿になっているのだった。
貴史は折角ホルストが気に入っているのだから笑っては駄目だと思って必死にまじめな表情を保つのだった。