第13話 テイクアウトのドラゴンケバブ

ギルガメッシュの表の広場では、装具を身につけた騎士達がひしめいていた。その数は軽く五十を超える。森の立木に彼らの馬が繋がれているために騎士の頭数より更に賑やかに見える。

タリーは最近増えたこの手のお客に対応するべく、丸太を使った椅子や、同じく丸太に天板を乗せただけのテーブルを戸外に増設していたがそれでも足りなかった。

貴史は垂直に立てた心棒に突き刺した巨大な肉をぐるぐる回しながら、調理用の剣を使って表面の肉を削り落とすのに忙しかった。

タリーは焼き上がったピタパンを山盛りにしたかごを運びながら言った。

シャベルに受けた削った肉ををヤースミーンに渡すのに忙しい貴史が答えると、タリーは立ち止まってぽつりと言った。

その時、待ちかねた騎士達が騒ぎ始めた。

ヤースミーンは、タリーからピタパンをひったくると半分に割って、肉と野菜をはさみ始めた。

ヤースミーンは適当に返事をしながら、ヨーグルトソースをかけてドラゴンケバブピタサンドを仕上げると、手早く騎士達に配っていく。

メイド服姿でピタサンドを売るヤースミーがドラゴンケバブスタンドの看板となりつつあった。

貴史はボウルに入ったニンニクやスパイスにヨーグルトを加えた液体を刷毛で肉の塊に塗りつけ始めた。

聞き覚えがある声に、貴史とタリーが振り返ると、そこにはミッターマイヤーの姿があった。

このとぼけた顔のじいさんは、ヒマリア国の勢力図を書き換えるようなことを平気でやってしまう。

ミッターマイヤーは顎に手を当てて考えてから答えた。

ヤースミーンの悲鳴が辺りに響き、ミッターマイヤーが「おさわり」をしたことが発覚する。

しばらくすると、ヤースミーンはミッターマイヤーの頭を殴って真っ二つに割れたトレイを持って戻ってきた。

昼過ぎになり、食事を終えた騎士達は順次出発して行ったが、そのうち十騎とミッターマイヤーはギルガメッシュに宿泊するという。

片付けを終えて一息ついたタリーは、貴史に告げた。

タリーの話が本当なら、足元を見て巻き上げたようなものだ。

貴史は少しあきれながら地下倉庫から酒樽を運んだ。

酒樽を運んできた貴史にタリーが皿に告げる。

タリーは紙切れに書いた地図を手渡しながら言った。

近くにいたヤースミーンも聞こえたらしく怪訝な顔をした。

身支度をした二人は言われたとおりに荷車にビールを一樽のせ、貴史がそれを引きながらでかけることになった。荷車は貴史の世界にあったリアカーを木製にしたような代物だ。

貴史は一緒に歩いているヤースミーンに訊いた。

ヤースミーンも疑問に思っていたようだ。

ヤースミーンは貴史の告げた名前に心当たりはないようだった。

地図が示す二人の行き先は鬱蒼とした森の中だった。