第109話 自警団出動
文字数 2,204文字
貴史が聞きなれた声に振り返ると、タリーが料理を乗せた皿を、テーブルに乗せようとしており、その横には商工会長のジョセフィーヌの姿も見える。
いきなり話を振られたソフィアは居心地悪そうに身をすくめたが、タリーは無頓着に話を続ける。
タリーが示す試食用のテーブルに皆が近づくと、商工会長のジョセフィーヌがセーラの存在に気づいた
セーラとペーターはジョセフィーヌが苦手らしく、彼女が別の相手と話し始めると小声で言い争いを始めた
コソコソと話している二人だったが、トロールのペーターは結構目立つのでタリーが目を止めた
タリーは、素材の味を確かめるためにシンプルな料理を選んだと思えた。
ドラゴンのベーコンをハムステーキ風に焼いたものや、カルボナーラ風のパスタ、そしてクラーケンの燻製をそのままスライスした物やフライが並ぶ。
ペーターの賛辞にタリーは微笑を浮かべて一礼して見せるが、ヤースミーンはペーターに囁く
集まった人々は、それぞれが好き勝手な話を始めて収拾がつかないが、雰囲気としては悪くない。
タリーは手ごたえを感じて満足そうにうなずいた。
何事もなく試食会が終わろうとしていた時、商工会のメンバーの男性が会場に飛び込んで来た。
男性はジョセフィーヌを見つけると、息を切らせながら報告する。
ガイアレギオンの名を聞いて貴史達も緊張を高める。
つい先ごろまで、ガイアレギオンに進攻されて、勝ち目の少ない戦いを挑んでいたことが記憶に新しいからだ。
セーラとララアは微妙に物騒なことを言いながら波止場に向かうそぶりを見せた。
ジョセフィーヌは二人の様子を見て満足そう二人に声を掛けた。
セーラは硬い雰囲気でジョセフィーヌの言葉を受け流し、ララアは無邪気そうな表情で手を振って見せる。
ジョセフィーヌから少し離れたところで、セーラはララアに小声で言った。
セーラはララアの言葉を聞いて意外そうにララアに視線を向ける。
セーラとララアはならんで商品見本市の会場から波止場へと歩き始めた。
ヤースミーンの言い分はもっともなのだが、貴史は相手がガイアレギオンだけに何となく気乗りがしない。
貴史は過去にガイアレギオンの指揮官であったガネーシャと戦ってみぞおちから背中まで剣で刺し貫かれたし、先ごろ侵攻してきたハヌマーンと剣を交えた時は腹を切られて内臓が飛び出るほどの傷を負わされていたからだ。
貴史がちょっと気弱な発言を漏らすと背後からヤンがフォローした。
ヤンの言葉はあまり励ましになっていないが、それでも一緒にいてくれたら頼もしいのは確かだった。