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文字数 251文字

   Ⅵ


 彼女は小高い丘の上、ほのかな明るさに染まる建物を遠くから見つめていた。

 子供たちに食事をさせなければならない。彼女の本能と隣り合った母性がそう告げ、研ぎ澄まされた嗅覚が獲物の匂いを感じとった。
 心が、静かな喜びと興奮で打ち震える。

 だが気をつけなければならない。鋭い直感が、行く先に凶暴ななにかが潜んでいることを知らせてきたからだ。いまはおとなしくしているが、迂闊なことをすればたちまち牙を剥いてくるだろう。

 狩りにはいつだって慎重さが要求される。
 そして彼女は、慎重でいることが得意だった。
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