第49話 四九、十月京へ移動、母尼、父隠居
文字数 346文字
十月になって京へ引越し移動した。母は、尼になって、同じ家の内にいるのではあるが、別の棟の方に住み離れている。父は、ただ私を大人になし据えて、自分は世間の付合いには出て交わろうともせず、私の影に隠れでもしているような態度を見るにつけても、頼もしくもなく、心細く思っていると、私のことを聞いておられる縁のある方が、「なんとなくつれづれに心細くしているよりも、出仕してはいかがですか」とお召しがあるのを、昔気質の親は、宮仕えする人は憂き目にあうことだと思っているのか、私を家で過ごさせたがる。
「今の世の中の人は、御縁があって宮中へ出仕するのですよ。そうすると自然と、良い試しもあるのです。折角だから、一度お試しになったらどう」と言う人々もあって、父はしぶしぶと宮仕えに出ることを承諾してくれた。
「今の世の中の人は、御縁があって宮中へ出仕するのですよ。そうすると自然と、良い試しもあるのです。折角だから、一度お試しになったらどう」と言う人々もあって、父はしぶしぶと宮仕えに出ることを承諾してくれた。