第72話 七二、宮家での女房たち

文字数 209文字

 うららかにのどかな宮家で、同じ気心の人が、三人ばかりで、物語などして、退出した翌日、所在なく退屈なままに、この親しい女房たちと共に、宮仕えした昔が恋しく思い出されるので、二人に当てて、
   「袖ぬるる荒磯浪と知りながらともにかづきをさせいぞ恋しき」
と詠んで送ったところ、
   「荒磯はあされど何のかひなくてうしほに濡れる海人の袖かな」
いま一人からは、
   「みるめ生ふる浦にあらずは荒磯の浪間かぞふる海人もあらじを」

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