第11話 十一、三河高師の浜、木の下に庵
文字数 342文字
それより上は、猪鼻という坂で、ほんとに侘しい所を上って行くと、三河の国の高師の浜という所だった。八つ橋というのは名だけで、橋の跡形もなく、なんの見所もない。
二村の山の中に泊った夜、大きな柿の木の下に仮屋を作ると、一夜明けると、仮屋の上に柿が落ちかかっているのを、人々が拾いなどしている。
宮地の山という所を越える頃、十月末になるのに、紅葉も散らず盛りの頃である。
嵐こそ吹いて来ない宮地山が、まだもみじ葉も散らないで残っている。
三河と尾張との国境になる「しかすがの渡り」は、げに思い煩うようにおかし。
尾張の国の、鳴海の浦を過ぎると、夕潮がただ満ちに満ちて、今夜、宿らむも、中間であり、潮が満ちて来たならば、ここを過ぎることが出来ないと、一行は、ある限り走りまどいながら通り過ぎた。
二村の山の中に泊った夜、大きな柿の木の下に仮屋を作ると、一夜明けると、仮屋の上に柿が落ちかかっているのを、人々が拾いなどしている。
宮地の山という所を越える頃、十月末になるのに、紅葉も散らず盛りの頃である。
嵐こそ吹いて来ない宮地山が、まだもみじ葉も散らないで残っている。
三河と尾張との国境になる「しかすがの渡り」は、げに思い煩うようにおかし。
尾張の国の、鳴海の浦を過ぎると、夕潮がただ満ちに満ちて、今夜、宿らむも、中間であり、潮が満ちて来たならば、ここを過ぎることが出来ないと、一行は、ある限り走りまどいながら通り過ぎた。