第58話 五八、梅壺の女御が清涼殿に
文字数 226文字
その次の夜も、月がたいそう明るいので、藤壺の東向きの戸を押しあけて、しかるべき女官たちが物語りなどしながら、月を眺めていた。そこへ、梅壺の女御が清涼殿に上らせ給われる気配がし、心にくいほど優雅に聞こえてくる。それにつけても「故宮である亡き中宮がおわします世であったならば、このように上らせ給われたのでしょう」など、人々が言い出したていたが、本当に胸がうたれ、なんとすばらしいことと思われた。
「天の戸を雲居ながらもよそに見て昔のあとを恋うる月かな」
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