第24話 二四、七月十三日の夜の月

文字数 387文字

 その月の十三日の夜、月がとても隈なく明かるいので、みな人も寝た夜中に、縁に出て座り、姉と二人で、空をつくづくと眺めて、「ただ今、行方も分からないように飛びだして失踪したならば、人々はどんなふうに思うだろうか」と問われたので、なんて恐ろしいことを姉さんは考えるのだろう、顔色を見て、異なる話題に言い変えて笑いなどして、聞いていると、通りの向かいの家に、先払いの車がとまり、「荻の葉、荻の葉」と供の者が呼んでいるのだけれど、相手は答えなかった。何度呼んでも返事がないので、笛を上手に吹き澄ました後、車は通り過ぎて行ってしまうようだ。
  「笛の音のただ秋風と聞こえるになど荻の葉のそよと答えぬ」
と詠んだところ、姉は本当にといって、
「荻の葉の答えふるまでの吹き寄らでただに過ぎにる笛の音ぞ憂き」
こんな調子で明るくなるまで眺め明かして、夜が明けてから二人とも寝てしまった。

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