第6話  六、野山かき分け武蔵と相模(にしとみ、もろこしが原) 

文字数 614文字

 野や山、葦や荻の中をかき分けながら、ことなくて進むと、武蔵と相模との中にあり、あすだ川というほとりにでた。在五中将の「いざこと問はむ」と歌を詠んだ渡りである。 
中将の家集には「すみだ川」とある。舟にてわたると、相模の国にとなる。
西富という所の山は、絵によく描かれ屏風を立て並べたような感じである。片方は海、浜の様子も、寄せ返す浪の景色は、とにかく面白い。
「もろこしが原」という所も、砂が殊の外に白かったが、二三日かけて進んでいった。「夏は大和撫子が、濃く薄く錦を引くるように咲いている。今は 秋の末だからば見えない」と言うのだが、猶、ところどころには、うちこぼれており、淋しそうに咲き渡っている。「もろこしが原に、大和撫子も咲いている」など、人々はおかしがった。
※在五中将:伊勢物語は、平安時代初期の在原業平らしい男を主人公とした和歌の短編歌物語集で、主人公の恋愛を中心とする。主人公の名は明記されず、多くが「むかし、男(ありけり)」の冒頭句を持つとでも知られる。作者不詳。平安時代の初期、西暦900年前後。
「伊勢の海の深き心をたどらずて ふりにし跡と波や消つべき(伊勢の海の深く隠れている物語の心を味わおうともしないで、ただ古いからと波が消すように否定して良いはずがない。)」と、なかなか味わい深い言葉が残されている。
ネットでの説明であるが、なにか心ひかれるようなきがする。いつか、気かがあれば伊勢物語も読んでみたくなった。
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