第１４話　十四、広々と荒れた住まい　

　三条の我家は、広々としてはいるが荒れており、これまで通り過ぎてきた山々にも劣とらない、大きく恐ろしそうな深山木があり、都の内と思えない程である。とりあえず、年末の騒がしい時期であるけども、早くと思う私の気持ちを、「物語を探してきて見せて、見せて」と、母を責めると、母は三条の宮で、親族の人が、衛門の命婦という宮仕えしている人を、訪ねて、文をやったところ、命婦は珍しがって喜び「宮様の御前のものを拝領したのです」と言いながら、わざわざ目出度き冊子などを、硯箱の蓋に入れて寄こしてくれたのです。嬉しく嬉しくて、夜も 昼もこれを見るのに没頭し始め、 又々も見たいといっても、ありもつかぬ都のほとりにで、だれが物語を探して見せる人があるだろうか