第55話 五五、宮仕えを引き結婚

文字数 291文字

 こうして出仕したからには、充分に宮仕えの方にも馴れているのだけれど、ひねくれ者という評判が立たない限り、宮家では自然と人並にお思いくださり、もてなしてくださるようなこともあったのだろう。親たちは、そんな心得もしらず、ほどもなく私を宮仕えから引かせ家に閉じ込め結婚させてしまった。そぷはいっても、その有様が、たちまち華やかな羽振りのよい勢いのいいものではなく、今まで他愛もない浮ついた気持ちで、物語の貴公子などの夢を見ていたのに、現実の結婚は、ことのほかに期待外れの有様であった。
  「幾千たび水の田芹を摘みしかは思いしことのつゆもかなはぬ」
とばかり独り言を詠みそのままになった。

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