第６９話　六九、越前の守の嫁

文字数 198文字

　昔たいそう親しく語らいあい、夜昼に歌など詠みかはした人で、長い年月が経ってからも、昔のようではないが、絶えず便りを交わしている人が、越前の守の嫁になって、その地へ下っていかれたところ、すっかり音信が絶えてしまって、かろうじて人づてに尋ねてこちららから
　　「絶えざりし思いも今は絶えにけり越しのわたりの雪の深さに」
と言い送ったその返しに、
　　「白山の雪の下なるさざれ石の中の思いは消えむものかは」

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