第37話 三七、物詣でより光源氏
文字数 272文字
こんな、そこはかなきことばかり思い続けていて、物詣をわずかばかりしても、はかばかしくなく、人並でありたいとも 念ぜられず。この頃の世の人は 十七八歳より経を読み、行いもするのだが、私はそれ程思い考えられず。かろうじて思うことは、「とりあえずやんごとない身分で、かたち有様が、物語にある光源氏のような人を、年に一回でもいいから通っていただき、浮舟の女君のように、山里に隠し据えられて、花、紅葉、月、雪を眺めて、いと心細くしているなか、素晴らしい御文などを、時々待ち見などしたいものだ」とばかり思い続け、これが私の理想的な将来の夢だと思っていた。