第68話 六八、仏の御利益
文字数 238文字
事も心にかなわない状況ではあったけれど、そのまま時の流れにまかせてきた。このような遠く離れた物詣でをしても、道中の様子を、風情があるとも辛いとも見てきたことで、自然と心もなぐさめられ、そんな物見遊山でも仏の御利益を頼しく、 さしあたって辛く嘆かわしいと思うこともないままに、ただ幼い子供たちを、早く思い通りに育てあげたいと思うにつけ、年月が過ぎて行くのも、心もとなく、せめて頼みに思う夫だけでも、人並になるような任官をしてくれたらと思い続けている心地は、頼もしいことである。