昔を懐かしむ

文字数 968文字

 最近の流行りについていけない自分がいる。
 むしろ、自分が子どもの頃に好きだったものに思いを馳せ懐かしむことが増えた。
 なぜなのか、少し考えてみる。

 この現代は、どんなものでも消耗、消費
する速度が早すぎる。
 どんなに苦労して作ったものでも、一瞬で消費され、数秒で消えていく。
 物ばかりが豊かになって、肝心の人の心は貧しくなっているのではないか。
 実際、日本より貧困国では物が乏しくとも、人の心は豊かで、純粋に物事を感じ、楽しむ人が多いという。

 私は子どもの頃、携帯電話がない時代を生きてきた。
 今のようにネットなども一切ない時代。
 遊びたければ、友達と約束してから家に帰宅して、そのまま公園やお宮へ集合し、真っ暗になるまでかけっこをしたり、遊具で遊んだり、無我夢中だった。
 時々、駄菓子屋さんに行ってはどのお菓子を買おうか、財布の中にしまってあるお小遣いとにらめっこしながら慎重に選んで、レジにいるおばあちゃんにお金を渡しては、学校であったことなどを話したりした。
 あとは……帰宅してすぐにテレビの前に座り、アニメを見るのは当たり前だった。
 当時はアニメが午後4時付近から数時間放送されていた日もあったから、見たいアニメの時間をチェックしてテレビの前で待機する子も多かっただろう。
 俗に言う、アニメ黄金時代のひとつに数えられる時期に被っていた。
 塾へ行く子はかなり少なく珍しい方で、とにかく遊び回ってる子どもが多かった。
 今思い出してもこれがあったな、あれもあったなと楽しかった思い出が蘇る。

 他にも、外で電話をするには公衆電話しか使えず、公衆電話で使えるテレホンカードか小銭を握りしめて電話ボックスに入ったものだ。
 あとどのくらい話していられるだろうという一種のドキドキ感があったし、電話ボックスは周りからの隔離空間のため、ちょっとした非日常を味わえたものである。
 今では公衆電話を使用する人はほぼいないし、むしろその数は年々減っていっている。
 全てスマホがあれば解決してしまう。なんとも便利になりすぎた。
 公衆電話の話ですらそのうち、まるで昭和初期みたいな感覚で若者に受け取られる情報へと成り下がる。
 文明の成長と衰退を繰り返して文化は残っていくけれど、不便さの中にあった楽しみすらも消えていくのに寂しさを覚える今日この頃であった。
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