季節のバトン

文字数 477文字

 寒かった日々は終わりを告げて、どこからか春がやってきたかのような陽気が増えてきた。
 何も聞こえない無音の世界から、普段何気なく聞き流す自然の音が日常へと戻ってくる。鳥の鳴き声が聞こえてきたり、虫の声を聞くとなおのこと実感しやすいはずだ。
 もしも季節を人で例えるとするならば、運動会で恒例の長距離リレーで選手交代する時に走りながら手渡すバトンの受け渡しに似ている。
 自分の走るべき長距離を全て走りきって疲れ果てた冬が、やる気満々の春へ、あとは任せたとバトンを託す。そして冬は、また自分の出番が回ってくるまでゆっくりとその体を休めるのだ。
 きっと春は、冬が走り始めた頃からいつ冬が走り終えてもいいようにしっかりと準備をし、体調もメンタルも絶好調になるように調整していたかもしれない。
 そんなふうに考えてみると冬に対して今までお疲れ様、ゆっくり休んでくれと声をかけたくなる。

 この陽気に少しだけ気の早い植物が花を咲き誇らせている様は、人よりも一足先に春を先取りして楽しんでいるかのように見えなくもない。
 次は我々、人間が春を楽しむ番だ。存分に満喫しなくては。
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