たんぽぽ

文字数 365文字

 日に日に気温が上がり、野の花々たちが我も我もとつぼみを開き、どうかしら? ほら素敵でしょう? と自慢げにその美しさをアピールしているのは微笑ましい。
 春の代表ともいえる桜はすっかり葉桜へと変貌し、また来年に咲くためにお休み期間に入ったところも多いようだった。
 さて、今日ここにつぼみから花開いたたんぽぽがいた。
 きっと日を浴びるのを楽しみにしていたのだろうこのたんぽぽは、時折吹く風に機嫌よく身を揺らしているように見える。
 周りに咲くほかのたんぽぽたちは、新たな仲間を歓迎しつつ、自分たちもまた楽しげに揺れ続ける。
 これからそう遠くないうちに、みんなが真っ白な綿毛を飛ばし、また次の代へと、命を繋いでいくのだ。
 けれど、今はただこの春を全身で楽しむだけ。
 ──その時がくるまでは、ほんの一殺那の間、たんぽぽたちのモラトリアムだ。
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