蜂と祖母

文字数 522文字

 晴れた日には畑仕事を黙々とこなす祖母がいる。時々凄まじいことをしでかすのでそのひとつを紹介しよう。

 ある日、草取り作業の最中に、ふと祖母の視界に入った一匹のスズメバチがいた。
 祖母はすかさず手に持っていた草苅り鎌でスズメバチをたたき落とし、地べたへ這いつくばったその胴体を真っ二つに両断。ここまでほぼ一瞬で仕留めたらしい。
 しかし祖母はそれだけでは飽き足らず、その近くにあったという、まだ小さな作りかけのスズメバチの巣もその草苅り鎌で粉砕した。その後、その両断したスズメバチも鎌で強打。
 その後完全にその骸が土に埋まるまでその行為は続いたという。
 スズメバチにしてみれば、たまったものではなかったはずだ。
 ただ飛んでいただけなのに、いきなり始末され、挙句作っていた巣まで木っ端微塵に破壊されるのだから。
 スズメバチ視点でここまで聞くとホラーでしかない。

 私も職場ではスズメバチ退治を専門にする羽目になっているハンターのようなものだが、祖母は畑でもっと上の猟師のような謎の貫禄を発揮していた。
 もしも彼女が本格的に猟師だったなら、熊や猪を狩っていても不思議じゃなかっただろう。
 時々凄まじいエピソードを軽く話す祖母に、尊敬の念を覚えたのだった。
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