切ない罪悪感

文字数 432文字

 ある事実を知った時、これは知らないほうがいいと他人に対して口を噤む経験者は多いだろう。
 大抵は幼子の無邪気な質問に対しての場面が多い。教えるべきか、黙っているべきか。自分だったならどう判断するだろう。

 大抵の場合は、真実を告げた時、知りたくなかったという子どもの絶望した顔が浮かぶ、または実際に見てきた人も少なからずいるはずだ。
 無垢な子どもが知る知識というものは、世の大人達が子ども達が残酷な真実で傷つかないようにと、必死になってオブラートに何重にも包まれた優しい世界に変換されたものという認識でいる。
 さながらお菓子の包み紙のような、見せかけだけの上辺。お菓子そのものが真実……本体とするならば。
 お菓子を食べるなら、誰だって必ずその包み紙を取る。
 今は上辺で誤魔化せても、いずれは真実にたどり着く。
 けれど、優しい世界はあるのだと信じさせたい大人達は、今日もこっそりと切ない罪悪感を持ちながら、その真実を伏せ、優しい世界の維持のためにせっせと動くのである。
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