掃除機、ではない

文字数 664文字

 そろそろ寒くて布団から出たくない日々が増えてきた。
 そんな冬場に重宝するのが、裏起毛パンツ。
 家族から試しに買ってみなよと勧められて買ったら、すっかりそのあたたかさにやみつきになってしまった。
 一度履いたらもう二度と手放せないくらい、今や私の冬の相棒である。
 私が子どもの頃はズボンと言っていたので、パンツと表現されると一瞬困惑してしまう。
 ファッションにあまりに興味を持たなかったせいで、用語が変わると何を言っているんだ? とついていけなくなるのは私だけだろうか。
 ……とまあ、そんなことは置いておいて、そんな裏起毛パンツを、今年は新調した。
 あたたかさは変わらず、物価高騰の影響で値段は上がっていたものの、やはり冬を快適に過ごしたい気持ちの方が強かったのだ。
 そして、そのパンツを洗濯機で洗濯してもらって数日後。
 家族に怒られた。
「ちょっと、あんたの履いてるこのパンツ、洗濯機から取り出したら生地の表面にゴミばっかりくっつきまくって……まるで掃除機じゃないの!」
 失礼な。れっきとした裏起毛パンツだぞ! と反論するも、家族はゴミを吸着しまくるパンツに怒りを燃やして収まる気配がない。
 それならほかのものとは別にネットに入れて洗濯するしかないとネットに入れて洗濯するようにしたところ、やっと家族の怒りは収まった。

「ネットでだいぶましになったけど……このパンツは私の中では掃除機って名前にしたから」
 家族の中で、このパンツは掃除機というあだ名をつけられすっかり定着してしまっていた。
 だからパンツは掃除機ではないんだって……。
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