地球消滅

文字数 971文字

「みなさんいかがお過ごしでしょうか。現在銀河系の宇宙空間より生中継でお送りしております。これより、巷で長らく滅ぶだろうと言われ続けたこの地球はこの度ついに消滅となり、消滅まで残すところあと二時間でございます。この番組では、その消滅の瞬間を皆さんと共に見届けたいと思います。どうか皆さん、チャンネルを変えずにそのままでお願いいたします!」
 画面の映像をぼんやりと眺め、耳へと流れる流暢な言葉を右から左へ聞き流す。

 その昔、地球は青い星とも称されるほど綺麗な星だったらしい。
 らしい……というのは、自分もその話を又聞きしたため、直接知らないからだ。
 なんでも人がまだ住んでいた頃の地球内では長年に渡る大気汚染によるオゾン層の破壊、森林伐採による大規模な干ばつ、温暖化による永久凍土が溶け、水位上昇に伴う水害の拡大、次から次へと襲い来る未知の病原菌が引き起こした大量感染による人口減少、他にも上げれば問題ばかりが増えていった結果、青い星はすっかり赤茶けたみすぼらしい星へと変貌を遂げ、昔の姿はもう見る影もなくなったという。
 これではもう人が住むことはできないと判断した当時の各国のお偉いさん方は、早速国民を地球から別の星へ移住していく大掛かりな作戦を決行した。
 その当時劣悪な環境を生き残った人口は一万もいたかどうかくらいに減少していたため、案外移動そのものはすんなりと上手くいったそうだ。

 ──それからかなりの年月が経ち、住まなくなって久しい地球がついにその寿命を終えることとなった。
 地球以外で育った自分たちには、地球と聞かされてもどこか別の話にしか感じない。何せ地球で生まれていないから親近感すら持てないのだから。
 まあ一応、人類が誕生した星ではあるから、人と話すネタくらいにはなるだろうと軽い気持ちで中継映像を眺めた。

 そして、その時は訪れた。
 赤茶けた地球内から大爆発が起こり、見事なブラックホールを形成した。見事な自爆……いや自然消滅。
 こうして星が爆発して滅んでいく様はもう何度も数え切れないほど画面越しに見てきてはいたが、やはり人類が誕生した星が無くなるというのは、人類の一人として惜別の感情が起こるらしい。
 地球が無くなった今、我々は地球以外で人口を増やしているし、これからもきっと今までと変わらず平和な日常を歩んでいくのだろう。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み