影響力

文字数 640文字

 祖母が少し前に購入したハードカバーの本があって、その一冊を読ませてもらった。
 前々から興味のあるタイトルだったのもあって、開いて読み始めてみたものの目が異様に疲れる。なんでだ? と首を傾げた。

 その疲れの原因は、異常なまでに使われる読点にあった。
 何しろこの本に出てくるだろう読点の数は多かった。

 いつもなら読書で疲れるということはほとんどないのだけれど、この本は何とか読み切ったと表現したくなるくらい疲労感があった。
 しかし、本を読むのを苦痛に感じたのは子どもの頃以来だ。
 普段なら、もっとわくわくしながら本のページをめくるのだが……この本に関してだけは、やっと一ページ終わったという謎の疲れを抱えたうえでめくっていた。
 当然疲れながら読んだため、話の内容など頭に残るはずもなく、もう二度と読まなくていいと自分にしては読書をしてきた中で滅多にしない酷評をくだした一冊であった。

 著名人や人気作家の売れている人気作だからといって、必ずしも自分の好みの文章、読みやすい文章であるとは限らない。
 面白いかどうかはその読み手にしか判断できないのだ。

 いつかどこかで見かけた文句が頭をよぎる。
 その文句に当てはめると、これが私には読みにくい、合わない文章なのかと理解した。

 例えどんなに読点だらけでも、名前の知られた人物が書いたものだから面白いはずだと書店で手に取った人もいるし、もしくは読みやすいと感じた読者が多いならば容易く人気作になる。
 知名度の影響力を改めて実感した一日だった。
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