忘年会

文字数 976文字

 ついにやってきた、忘年会当日。
 最終確認の打ち合わせも全て済ませて挑んだそれは、最初の人数確認時にバタバタしながらも何事もなく終了した。

 忘年会ということで、男性も女性もいつもより気合いを入れておしゃれをする人の多いこと多いこと。
 ここってテーマパークだったっけ……。
 来る場所間違えたかな、と思うくらいには、普通の格好で参加した自分が場違いなような気がした。
 自分の席はくじ引きでいつも決めているのが恒例で、今回もまたくじ引き。
 とはいえ、社内でも接点がなく全く知らない人ばかりに囲まれていては歓談もへったくれもない。
 私の席の周りは、一人二人話せる人がいる程度で、あとはあなたは誰ですか? な人ばかりだった。
 会話はそこまで弾む……わけもなく、ちょこっとだけ上辺の会話をして、あとはほぼ無口で過ごした。
 何せほとんどが初対面に近い人ばかりなのだから、人見知りしてしまう。
 終始緊張するしかなかった。
 
 料理が運ばれてくるものの、少しづつ出されるのですぐに完食してしまい、ぼーっと待つ方が長かった。
 料理が提供される待ち時間が暇なので、周りを何となく観察して見ることにした私は、忙しなく働くスタッフの皆さんを眺める。
 会場内に十名以上は居ただろうか。
 彼ら彼女が人の合間を縫って、くるくると動いている。
 それでいて、同じスタッフや客である私達の誰ともぶつからない辺り、その動きはやはりプロであった。
 料理を待つより、その一挙一動を観察している方が面白い。
 周りの飲み食いで大騒ぎする会社の人達の喧騒をBGMに、観察に精を出していた。

 会社の人達の大半はお酒を飲む。
 当然自分の席を離れて仲の良い人達と語らっているので、食事がテーブルの上に溢れんばかりに乗っている。
 私を含め、お酒を飲まない人達は、食べることをメインに置き、黙々と食べては次の料理が来るまでスマホを弄って待つ。
 順調に料理を減らしているので、溜まるとしたら、食べ終えた皿くらいのもの。
 適宜スタッフさんが回収に来るので皿が溜まる状況そのものが少ないが……。

 その後、まだ食べ足りない私を含めた仲のいい数名で、ファミレスでパフェを食べるちょっとした二次会へと突入。
 緊張状態であった忘年会よりも、気心知れたメンバーで集まる方がよほど楽しいのだという気持ちを身をもって実感したのだった。
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