啓蟄

文字数 321文字

 太陽の柔らかな日差しが、つくしやてんとう虫、ミツバチ達をゆっくりと優しく起こす。
 もう起きる頃だよ。眠るのはもうおしまい。みんなが君たちを待っているよ。早くおいで。

 まだ眠いよ……起きたくないよと思いつつ、しょうがないなあと眠い目を擦りながら地表に出てきた彼らは驚く。
 あれだけ白一色に染まって静かだった世界が色づいているのだ。
 花は咲き誇り、緑が茂る草っ原が広がっていて、そこに雪の面影は何もない。
 なんてことだ。こんなに綺麗な世界になっていたのなら、もっと早く起きればよかった。
 一足先に春を楽しんでいる仲間たちの輪に加わるべく、さっき起き出した彼らもうきうきと駆け出していく。
 太陽はそんな楽しそうな彼らを優しい眼差しで見守っていた。
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