日が伸びた

文字数 513文字

 なんか日が伸びたよね。
 夕方に差し掛かった頃、そんな言葉を家族が口にした。
 太陽の軌道が、徐々に冬の軌道から春と秋の軌道へと移動しているのだから、日が伸びるのは当然だ。
 こんなもの、学生時代に習う程度の知識だから、大人もみんな知っていて当たり前だと思うだろうが、そうなの? とびっくりする大人の方が多いのが現実だ。

 学生時代にどんなに勉強して頭に詰め込もうが、世の中の大人がそれに興味関心がなければ、詰め込んだところで話として使うこともなく脳内から情報がいつの間にか消えてしまう。なんでも、使える情報しか残さない仕組みがあるらしい。
 学んだことを忘却してしまうのは恐ろしい。だから、巷には大人向けの学生時代の勉強の復習関連の本があるのだろう。

 私の家族は天体に関して興味が薄いため、どんなに説明しようが右から左へ聞き流してしまう。多分、脳が覚えることを拒否している作用が働いている。
 もう少し興味関心を持ってもいいと思うのだけど。脳が活発だとボケないと聞くし。
 自然の仕組みは、科学的に説明できることも多い。つまり理解できるだけの材料はあるのだ。
 家族は自ら知ることを放棄しているようで、少し寂しさを覚えた、冬の午後だった。
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